新年、君と一緒



あけましておめでとう。
今年も宜しく、ね?







[新年、君と一緒]





疲れたと叫ぶ四肢。
腕も足も使い過ぎてクタクタだし、痛いくらいの寒さが染みて更に疲れが膨大していく気がする。


(大晦日だってのに何してんだろ、私…)


Cランクの輸送任務。
それだけなら良かったのに案の定邪魔が入って、しかもそれが弱い癖に無駄に数が多くて。

でも予定より三時間も遅れて里に帰ってきた私を、綱手様は大晦日に任務を頼んだ罪悪感からなのか、有難い事に全く咎めずに帰してくれた。


(まあ別に帰ったって、
一人で酒飲みながらテレビ見るだけだけどね…)


女として何とも寂しい大晦日の過ごし方だが、四年前に彼氏と別れたきり独り身の私にとってはもう慣れた過ごし方である。

そうして自宅の冷蔵庫にどんな種類の酒が何本あったかを思い出しながら歩いていた、そんな私に、



「なまえ」



赤提灯が暖かい屋台。
そこの暖簾から顔を出して手招きしている人物を見て、私の足は自然にそちらに向いていた。


「奈良じゃん。大晦日なのに屋台で一人酒?」

「まぁな、両親が温泉旅行に行ってるから一人で暇だったんだよ」

「へえ…」


暖簾の中ではおでんが湯気を立てて、捻り鉢巻きを頭に巻いた親父さんが「お嬢さんもどうだい?」と言う表情で焼酎の酒瓶を掲げている。

そんな優しい誘惑に、
この寂しい独り身が勝てるわけが無い。


「じゃ、ご一緒
させてもらおうかしら」

「へっ…そうこねぇと」


暖簾をくぐり、奈良の隣に腰掛けて愛想の良い親父さんには熱燗とつまみには大根を頼む。

傍らに置かれたラジオからは年末恒例の歌番組が流れてきて、(ああ今日で今年も終わりなんだ)とやっと実感した。


「はい、お嬢さん」

「あ、ども」


出された熱燗と大根を受け取って徳利に焼酎を注いでから、頬杖をついてラジオを聞いている奈良の肩をつつくように叩く。

何だよと言いたげに眉を寄せて振り向いた奈良に私は元々置いてあったコップを持たせ、笑った。


「私、奈良と年越せて結構嬉しいかも」

「は?」

「あっほら!!カウントダウン始まったよ」

「あ?あぁ…」


ラジオから聞こえる、
カウントダウン。

数字が減るのに合わせて心臓が高鳴り、新年になる瞬間を待ち構えている。


『5、4…』

『3、2…』



『1…0!』







「あけましておめでと、
今年も宜しくね」

「おう、此方こそ宜しく」


年が明けたと同時にお互いの徳利をぶつけ合い、親しき仲にも礼儀ありって事で新年のご挨拶。

それから二人同じタイミングで酒を煽って、ふと目が合ったから何となくお互い見つめ合う。

すると奈良がフッと小さな笑みを溢し、私の手を握って立ち上がった。


「親父、ご馳走様」

「お代はいりませんよ。
あっしからの旦那達へのお年玉って事で」

「そっか、ありがとな。
また来るよ」

「へい、今後とも何卒ご贔屓に頼んます。お嬢さんもまた旦那と一緒にいらして下せェ」


ぺこと頭を下げる親父さんに見送られながら、私は殆んど口をつけてない大根を少し心残りに思いつつ、奈良に手を引かれて屋台を離れていく。


「奈良?」

「俺んちで飲もうぜ。
親父達は三日まで帰ってこねぇし、いいだろ?」


な?と私に訪ねてくる奈良だけど、きっと此所で断っても何かしら(無理矢理な)理由を付けて私を家に上がらせるに違いない。

そう思った私は奈良にバレないように苦笑し、握られたままの手をそっと握り返して隣に並んだ。









(じゃ、三日までお世話になろうかな)

(三日まで帰さねぇよ)

(あ、やっぱり?)

end.
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A HAPPY NEW YEAR!!

そして新年一発目から訳分からない話ですいませんでした!(初謝り)

この二人、ちゃんと
お互いに好きなんです。

そしてそれをお互いに分かっている。[好き]とは口に出さないけど二人はれっきとした恋人同士です。

見た目は冷めてるけど、
実は里のどのカップルよりも愛し合ってるバカップルなんです(笑)


さて、
言い訳はこの辺にして。

1/31までフリーです。
何処かに置く際は執筆者が如月ひなだと分かるようにお願い致します。

今年もどうぞ
宜しくお願い致します!




■あとがきby mims■

[おかしのくに。]の如月ひなさまより強奪してきた、2008お正月フリー夢です!
ひなちゃん、甘いですーー最近甘い夢が多くて、ほくほくほわほわですよ!!
今年もどうぞ、宜しくお願いします。
2008.01.06
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