あなたの隣




「あ……。」


「…よぉ、久しぶりだな。」




任務の帰り偶然鉢合わせた彼に、私の心音は一気に騒がしく鳴り始めた。













 あ な た








私の目の前にいるこの男「奈良シカマル」は、もういつからなんて思い出せないくらい前から、私が片思いをしている相手。



忍になり立ての頃は、偶然を装って特等席で雲を見てるシカマルに会いに行ったり

本当に偶然、街中で出会ったりなんて事もよくあって、その度にいろんな話をする事が出来たから、片思いでも十分幸せだったんだけど。



最近は、お互い忙しくなって、偶然会う事も余り無くなった。

特等席でシカマルが雲を見てる事も少ないから、偶然を装うのも難しくて…。




前にシカマルに会ったのは………もう二ヶ月も前だっけ……。

あー、あの時は、ヒナタと甘栗甘でお団子食べてる時に、偶然シカマルがお店の前を通りかかったんだよね。



それから二ヶ月、シカマルに会えないまま時間だけが過ぎてっちゃって、私の想いは募るばかり。


だから、今日こうして偶然会えた事は、本当に嬉しくて仕方がないの。








「なまえ、食わねぇのか?」


「へっ?!あ、食べるよ。いただきま〜す。」



いつの間にか、私の目の前には注文した料理が並べられていて、シカマルに指摘された私は、慌ててその料理に箸を付けた。






あの後、シカマルに「飯でも食いにいかねぇ?」って誘われて、私達は木の葉でも美味しいと有名な和食処に来てたんだっけ。



ウキウキし過ぎて、回想に浸ってる場合じゃないよ…。

折角、シカマルと一緒に居られるんだもん、今までの分もシカマルとお話ししなくちゃ!!


なんて、私は自分自身に変な気合いを入れたりしていた。







「最近、なまえ忙しそうだな。」



器用な箸裁きで魚を解しながら、シカマルは私に話しかけてきて

その手付きにすら、うっとりと見惚れてしまいそうになる。




「うん、まぁね。…って、シカマルだって忙しそうじゃない。」


「まぁ、そうなんだけどな。…はぁ、昔は良かったよな、のんびりしててよ。」


「シカマル、少し会わない間に、また一段とジジ臭くなっちゃったわね…。」


「るせぇ。ったく、なまえも相変わらず口が減らねぇな。」


「ふーんだ。これが私のチャームポイントなんですぅ!」





口を尖らせながら、ちょっと可愛げの無い言い方をしてみれば、シカマルは「どんなチャームポイントだよ。」って呆れながら、ククッと咽喉の奥で笑った。






あぁ、ジジ臭いなんて嘘もいいとこ……。

二ヶ月ぶりに会ったシカマルは、以前にも増して男らしくカッコ良くなっていて

本当は会った時からずっと、ドキドキしっ放しなんだもん。


ねぇ、シカマル……私やっぱりシカマルの事がすごく好きだよ…。




言葉に出来ない想いを抱えながら、その後もお互いの近況や同期の話なんかで談笑して、私はシカマルとの貴重な時間を過ごした。












**********






「すっかり遅くなっちまったな。」



楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、食事を終え店から出ると既に外は暗くなっていた。





「送ってく。」


「えっ?!いいよ、シカマル明日も任務でしょ。それに…ココの食事代も奢ってもらっちゃったし。」


「そりゃ、俺が誘ったんだから、俺が払うのが当然だろ。それに、なまえん家まで送ったくれぇで明日の任務に差し障りなんかねぇよ。ほらっ、行くぞ。」



シカマルはそう言うと、さっさと歩き出すから、私は慌ててシカマルの後を追いかけた。





シカマルに会えたばかりか、一緒に食事して、更には家まで送ってもらえるなんて、今日は何てついてるんだろう。

それに、もう少しだけシカマルと一緒に居られる……。











月明かりに照らされた静かな夜道を、シカマルと肩を並べてゆっくり歩く。

少し前まで交わしていた会話も今は無言で、互いの足音だけが夜の闇に響いていた。




あ…シカマル、私の歩調に合わしてくれてるんだ……。



ふとそんな事に気が付いて、ほんわり心が暖かくなる。

隣を歩くシカマルにそっと視線だけを向けて見ると、少し上を向いて夜空を見ているその横顔に、ドキリと鼓動が高鳴った。




ホントにカッコ良くなったよね、シカマル。

背も随分高くなって、凄く逞しくなっちゃってさ…。

きっと、こんな風にシカマルに想いを寄せてるのは、私だけじゃないんだろうな。



胸の辺りがギュッと苦しくなって

もしかしたら、シカマルの隣を独占してしまう人が現れるんじゃないか

そんないつか来るかもしれない悲しい未来を描いてしまって、私は堪らなく切なくなった。





もう、この気持ちをシカマルに打ち明けてしまおうか。

そうしたら、シカマルの隣を私が独占できるのかな……。

でも…もし受け入れてくれなかったら………。



今にも溢れ出してきそうな想いと、私の中の臆病な心がぶつかり合って、何とも言えない歯痒さが駆け巡る。







「………なぁ、なまえ。」


今までの静寂を破るように、突然シカマルは私に話しかけてきた。



「へっ?!あ、何??!」


慌ててシカマルに返事を返すと、シカマルはゆっくり私の方に顔を向けてきて


なのに、シカマルは私と視線を絡ませると、直ぐに顔を逸らしてまた夜空を見上げた。




「何??どしたの、シカマル???」


「いや…何でもねぇ。」


シカマルは短く返事を返すと、そのまま口を噤んでしまって…。



ちょっと、すごく気になるんだけど…。

え、私、なんかした??



シカマルの突然の言動に、不可解な疑問を抱く。

シカマルに聞いてしまえば良いんだけど、何だか無理に聞き出せる様な雰囲気でもなくて…。

仕方なく私は、黙ってシカマルの隣を歩き続けた。








結局そのまま何の会話も無く、あと数メートルの所に私の家が見えてきてしまった。




シカマルと一緒に居られる時間が終わっちゃう……。

いっそこのまま時間が止まっちゃえばいいのに。


そんな私の淡い期待なんて叶うはずも無く、無情にも私達は自宅へと到着した。





「あ、今日はありがと。」


「俺の方こそ長々引き止めちまって悪かったな。」


「ううん。楽しかったよ。」


「そっか。」



口端を上げて微笑むシカマルが、何故かすごく遠くに感じて…悲しくなる。



「んじゃぁな、なまえ。」


「う…ん。おやすみ、シカマル。」


「おぉ。」



ポケットに突っ込んでいた手を出すと、私にその手をヒラヒラと振りながら、シカマルは向きを変えて歩き出した。

私は直ぐに家に入る事もしないで、その場に佇みシカマルの背中をただ見送るだけで。




今度会えるのはいつなんだろう……

また二ヶ月先……ううん、今度はもっと先かもしれない。

その時もまだ、シカマルの隣は空いてるだろうか…。

もしかしたら、その時にはもう………。



急激に襲い掛かってくる不安と焦燥感に崩れ落ちそうになる。



出来る事なら、シカマルを引き止めたい。

シカマルの隣を私のモノにしたいのに……



遠ざかっていくシカマルを見つめながら、やるせない程の感情に、私は泣きそうになった。





と、急にシカマルは立ち止まって、クルリと向きを変えると私の方へ引き返してきて。






「え……シカマル?」


驚きを隠せない私の目の前で、シカマルは徐に口を開いた。



「やっぱ、めんどくせぇんだよな。」




は?!え、何??めんどくさい???



「あの、シカマル…?」


戸惑う私を無視して、シカマルは私から視線を外し、後ろ頭を掻きながら言葉を続ける。




「いつ有るか分からねぇ偶然を待ち続けるなんてよ、いい加減めんどくせぇ。」


「え……あの…あれ?」



完全にパニクる私を、今度はしっかり見つめてきて

絡み合う視線にドキドキと心臓が鳴り響く。

射抜くようなシカマルの視線に、熱くなる頬を隠す事も出来ない。

夜風がふわりと私の頬を撫でて…それと同時にシカマルの声が私に届いた。





「偶然なんかじゃなくても、俺はなまえに会いてぇと思ってる。…なまえが好きだ。」


「シカ…マ…ル……。」



思いもよらないシカマルからの告白に、頭がついていかない…。

でも、心に響くその言葉は、しっかりと私の胸に刻み込まれて、ポロポロと瞳から涙が溢れ出した。




「お、おい、泣くなよ…。」


「だって…嬉しくて………私も、シカマルが…好き。」




もう、いつからかなんて思い出せないくらい前から募らせ続けた想いを、私は今やっと言葉にしてシカマルに伝える。


溢れ出す涙で目の前が滲んで、シカマルの顔もよく見えないけど…

でも、シカマルはすごく優しく微笑んでくれてるような、そんな気がしたの。




ふわっとシカマルの臭いが鼻腔に広がった瞬間、滲んでいた私の目の前は真っ暗になって

触れた所から伝わるシカマルの温もりに、私はシカマルに抱きしめられてる事に気付いた。



「シカマル?」


呟いた直後、シカマルの腕にギュッと力がこもって、耳元から広がるシカマルの優しい低音。





「ずっと、俺の隣にいろよ。」


「………うん。」






ずっと、シカマルの隣にいるよ………。


だから、私の隣ではあなたがいつも笑っていてね─────────。











━END━

→あとがき




"mon amour"のmims様に20万打突破のお祝いに捧げさせていただきます。





みむちゃ〜ん☆

改めて、200000hitおめでとうございます♪♪♪
確か、100000hitを越えた頃は、私はまだサイトを開設してなくて、でもその頃から、みむちゃんの書く小説にメロメロで通いつめてたのを覚えてるよ〜〜!!!!
それが、こうやって200000hitをお祝い出来る日が来るなんて……もう感激だよぉ!!!!(≧∀≦)ワァイ

って、勝手に押し付けがましくこんな駄文を………ごめんなさいっ!!!
だって、だって、一緒に喜びを分かち合いたかったんだよぅ!!!(>д<)ウレシイゾー

もし、お気に召してくれましたらどうぞ遠慮なく持ち帰ってくださいませ!!!!
あ、勿論ポイ捨て可能だからっっ!!!!こちらも、遠慮なく…。


いつもウルサイ私で、ごめんね……(滝汗)
これからもたくさん応援しまくっちゃいます!!!!!
"mon amour"の更なる発展を願って☆☆☆





お持ち帰りはmims様のみとさせていただきます。




ここまでお付き合いくださいましたなまえ様、本当にありがとうございました!!!!!(ペコリ)


[Ixia]の柊あきさまから頂いた20万打祝い夢でした。

あきちゃん、ただいま号泣中のみむです…感情移入しまくっちゃって、駄目だ
あきちゃん好き

20080806

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