無防備って、実は無敵の防御法

「でね、その時…って何か携帯鳴ってない?」

「え?あ、本当だ!ちょっとゴメンね!!」


友人とのティータイム。
お決まりの彼氏さんとの愚痴を聞いていたら、携帯が着信を知らせたので、私は慌ててボタンを押した。


「もしも…」

『あ、もしもし?銀さんだけどー…悪ィな急に。ちょっと聞きてェ事があってよ』


携帯を耳に当てた途端聞こえてきた、直接腰に響くような低い声に、聞き慣れてはいるものの思わず頬が熱くなる。

それでも平静を装って返事をすると、銀さんは少しバツが悪そうな声で言った。


『…蜂蜜って、どこ?』

「え?」

『いやさ、ちょっと腹減ったからホットケーキ作ったんだけど、蜂蜜が見当たらなくてよ…』

『銀さん、もう生クリームだけで良くないっスか?』

『何言ってんだ、シカ君!ホットケーキは蜂蜜掛けてこその代物だろーが!!いいからお前は生クリーム泡立ててろ!』


電話の向こうで聞こえたやり取りに吹き出しそうになりながらも、私は脳内で蜂蜜の在処を思い出す。

と、つい先日冷蔵庫の整理をした時の事を思い出し、何やら騒いでいる銀さんに聞こえるように言った。


「銀さん、蜂蜜なら冷蔵庫開けて右の方にあるはずなんだけど…」

『冷蔵庫の…おおっ!!あった!シカ君、蜂蜜見つかったからやっと食えるぞ!』

『やっとかよ…。
ったく…銀さん、ちょっと電話貸して下さい』

『ん、わーったよ。
じゃ、シカ君に代わるな?…どうせダイエットだ何だって騒ぐんだから、あんまりオヤツ食べ過ぎんなよ?』


相変わらず鋭い発言にギクッとする。この間ダイエット中にも関わらず、友人と季節限定のマロンパイを食べたこと、見抜かれてるんじゃなかろうか。

内心冷や汗を流して軽く放心状態でいたが、電話越しに呼ばれた名前のお陰で我に返った。


「も、もしもし?」

『悪いな、仕事中に』

「大丈夫だよ。丁度お友達とお茶してたとこだから」

『そっか。…あのさ、今日は何時頃に帰ってくんの?今日の夕食当番俺だから、何か食いたいもんとかあったら…』

「え?銀さんには聞かなくていいの?」

『…あの人は『デザートに甘いもんがありゃ良いよ』ってだけだし』

「アハハ、そっか。
じゃあね…久々に鯖味噌とか食べたいかな」


シカマル自身が鯖味噌が好きなせいか、彼の作るソレは本当に美味しい。

…ご飯が何杯でもいけそうな程で、思わず食べ過ぎないようにするのがキツいくらいに。

やっぱり今日はタクシーじゃなくて歩いて帰ろうかなと考え始めた時、シカマルが小さく笑った。


『分かりました。
…貴女のお望み通りに』

「!!!」


普段より低くて艶のある声が、油断していた私の耳を至近距離で擽った。

咄嗟に出そうになった悲鳴を何とか飲み込んだ時には既に通話は切れていて、私の頭の中でシカマルが意地悪い笑みを浮かべているのが見えた。


「…アンタさ、男二人と同棲って凄いよね」

「そう?でも中学時代からの親友と近所に住んでた幼馴染みだし、男って感じはしないよ?」


関心したような、でも何となく呆れてる友人の言葉に、私は携帯をバッグに戻しながら答える。

と、友人は深く長い溜め息をつくと、レモンティーを飲んで静かに一言。


「…無防備すぎるお姫サマには、狼達も襲う気が引けるのかねぇ…」








その頃、家にいる二人がくしゃみをしていたなんて事、私は知るよしも無かった。

END.





…姉さーん。
こんなでごめんなさい!

いつかリベンジさせて下さい…。



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如月ひなさまより頂いた銀さん&シカのコラボ夢。
一緒にホットケーキを作ってる2人の姿が可愛くて堪らないっ
リベンジなんて全然必要ないよ。ああ、私もシカお手製の鯖味噌を食べたいです。
ひなちゃん、ホントにありがとね〜☆
2008.08.31 mims
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