ちちんぷいぷい
「…どないしたん?なまえちゃんがそないな顔してたら、ボクまで悲しなるやないの。」
…寂しい…会いたい…ただひたすらに貴方を想って、真冬の星空を見上げていたら
「…ギン…ちゃん?」
「こんばんは、なまえちゃん。」
いつの間に現れたのか、私が今まさに会いたいと願っていた人…ギンちゃんがいた。
「…あれ、喜んでくれへんの?せっかく会いにきたんに…
ガッカリしたように言うその言葉を、最後まで聞き終わらぬ内に、私は思い切り飛び付いてみせる
「あらら、今日のなまえちゃんは甘えたさんなんやね?」
「…ダメ?」
「んー?ええよ、沢山甘えてなまえちゃんが元気になるんやったら、大歓迎や。」
なんて、いつもより少しだけ低くて優しいトーンを頭上から降らせるから…つい堪え切れずに涙が溢れてしまった。
「…なまえちゃん?泣いてるん?」
「…ち…違…っ」
「隠さんでもええよ、泣きたい時は我慢したらアカンねんで?」
「…っギンちゃ……」
寂しかった、会いたかったとは素直に言えず、ギンちゃんの背に腕を回しその胸に顔を押し付けることしかできないけど…少しでも、この気持ちを伝えたい。
「そうや、ええ事思い付いたわ」
「…?」
暫くの間、私の頭を緩く撫でていた手が、急にぴたりと止まってしまったので、不思議に思って顔を上げて見ると
「おまじない、かけてあげよか?」
普段開かない目を少しだけ開いて、悪戯っぽく笑うギンちゃんと目が合った。
「おまじない?」
「うん、なまえちゃんがボクに会えん時も、笑顔で居られるおまじないや。」
「べ、別に…ギンちゃんが居なくたって、いつも泣いてる訳じゃ…っ!」
「へぇ、いつも泣いてるんや?そら、ますますアカンなぁ?」
「…性格悪…っ」
「おおきに、よう言われるわ。」
「………」
言い返しても言い返しても、暖簾に腕押しなのが市丸ギン。
反論を諦めた私は、先を促すよう尋ねる。
「…どうやってかけるの?」
「ん?」
「おまじない!かけてくれるんでしょ?」
「そやったね、じゃ、今からかけよか。」
急に真面目な顔をして、私との間に少し空間を作ると、頬に手を添えながら言う
「なまえちゃん、目閉じてや?」
「…?うん」
「ん、ほな…おまじないかけます。ちちんぷいぷい…
「ぶっ!」
「な、なんやの?」
「だって‘ちちんぷいぷい’って!」
あまりの可笑しさに、目を開けようとしたらまぶたにそっと手を添えられて
「ダ〜メ。開けたらアカンよ?呪文がおかしいんやったら変えたるから…そやな、テクマクマヤコンとかがええ?」
「…も、何でもいいデス…」
尚も笑いを堪える私に「そんなら何がええの」なんてブツブツ言っていたかと思ったら…
「…はい、おしまいや。目ぇ開けてええよ?」
「え?もう…あ、あれ?」
もう終わり?と聞こうとした時首に冷んやりした感覚と、シャラ…という金属音がして、そっと首元に手を触れてみる。
「な…に?」
「こっち向いて、なまえちゃん」
名前を呼ばれ、言われた通りギンちゃんの方を見てみると、彼の持つ小さな鏡に私が映っていて
「これ…」
「さっき、おまじないかけたからねぇ、魔法で現れたんと違う?」
四つ葉のクローバーの飾りが付いた、シルバーのネックレスが、首元でキラキラ輝いていた。
「可愛い…」
「ほんま?気に入ってくれた?」
「うん、あ、あの…ありがと、ギンちゃん…」
「どーいたしまして、これがあったら寂しないやろ?ボクがおらん時も、ここに居るて思ってや。」
クローバーを指差しながら言うギンちゃんを見ていたら、私の中にさっきまで居座っていた寂しい気持ちは、その姿を消していた。
「…でも、たまには会いにも来てね?」
「もちろん来るよ、イヅルの目ぇぬすんで会いに来るわ」
再び悪戯っ子の顔をしたギンちゃんに、それはダメだよ、イヅル君が可哀相。と私が言えば
「いやや、ボクかてなまえちゃんに会えへんかったら可哀相やんか」
口を尖らせて、まるで子供のようにむくれて見せるので、今度は私がギンちゃんを撫で撫でする番になってしまった。
(…ギンちゃん、そろそろ眠たい)
(ほな、今日はボクが子守唄歌おか?)
(………それは遠慮しときます)
現世で暮らすなまえちゃんと、隊長市丸さんのカップル話。
上手くまとまらずで申し訳ないまくりだけど、みむちゃんに捧げます。
―――――――――――――――――――
ちちんぷいぷい -市丸ギン-
[
君を詠ぶ聲] 鮎澤さくらさまよりいただきました。
さくちゃんありがとう!!最近拙宅ではおバカな市丸隊長が幅をきかせていたので、隊長らしい空気のギンちゃんにキュンキュンでした。
「おまじないかけてあげよか」ってギンちゃんいかにも言いそう。しかも「ちちんぷいぷい」そのファニーでラブリーな台詞があまりに似合い過ぎていて、愛おしくて仕方ないんですがっ(´Д`*)
ちなみにひそかに思いっきりツボだったのが、
「…性格悪…っ」
「おおきに、よう言われるわ。」
というやり取り。
そこに、ほんのりと磯の香りを感じてしまった私は、多分だいぶ重症だと思います。が、きっとさくちゃんも狙って書いてくれたものだと信じています。ホントに素敵な夢をありがとうね、今夜の眠りのお供はテクマクマヤコンの市丸さんに決定★
2010.03.10 mims