初めまして、こんにちは。
これから、どうぞ宜しく。
―はじまり、そして、これから―
[side A]
「名前、なんて言うの?」
これが、初対面で発せられた言葉。
ナンパ・・・?
そう感じた第一印象は良いものじゃなくて、その軽さがどうしても受け入れ難かった。
毎日毎日、どれだけ冷たくあしらって突き放しても、へらりとした笑顔で口説いてくる。
軽い口調で真実味の無い言葉を吐く、口の上手い男なんて、絶対に信じられない。
偶然そこに出向することになった親友から彼について聞かされても、それは拭い去ることが出来なくて。
誰にでも優しくて、女の子には紳士的で、軽くて、バカで、懲りない男なんて好きになっちゃダメ。
もう・・・傷付くのは、イヤ・・・・・。
それなのに・・・どれだけ避けても、どれだけ逃げ回っても、いつの間にか胸の奥に居座られて。
頑なだった私の心のガ―ドは、土砂降りの雨の中で告げられた言葉に、いとも簡単に突き崩された。
あのとき奪われたのは唇だけじゃなかったみたいで・・・。
貴方の前では意地っ張りな私が居なくなりつつある。
抱きしめられて優しい瞳で覗き込まれると、想いが溢れて止まらなくなりそう。
強引な所も、明るい笑顔も、真剣な表情も、誰にでも向けられる優しさも。
大きな手も、射るような眼差しも、薄い唇も、そこから覗く犬歯も。
煙草を吸う仕草も、顰められた眉間も、切なげな声も、甘い囁きも。
全部ぜんぶ、丸ごと大好き。
伝えたいことはいっぱいあるの。
でもね?
これから先、時間は沢山あるから・・・少しずつ少しずつ、私の気持ちを教えてあげる。
その方が刺激的でしょう?
だから、今はこれだけ伝えておくわ。
柔らかな唇が離れて行った後、ありったけの想いを込めて囁いた。
「キバ・・・愛してる」
⇒side Bへ
[side B]
「白眉・・・天姫、ですけど・・・」
これが、初めて対面した時に聞いた言葉。
あれ?もしかして、これってナンパしてるみてぇじゃね?
オレが一目惚れした女の子は明らかに警戒してる声音で、目が“胡散臭いヤツ”と物語っていた。
毎日毎日、一生懸命声をかけてオレの気持ちを伝えても、サラリと切り返される。
軽薄な口説かれ方なんて、されたって何とも思いませんって感じだなぁ・・・。
偶然ウチの事務所に出向してきた彼女の親友から、過去に辛い思いをしたと聞いても、オレはそいつとは違うって思い込んでた。
酔ったイキオイみてえな告白したり、別な女に優しくしてるとこ見せたりして、真剣さが伝わってねぇんだろ、ってシカマルに説教された後に気付かされた君の痛み。
どれだけ半端な態度でアピ―ルしてきたか、どれだけ不安にさせてきたか、全く分かっていなかった・・・。
溢れるギリギリの所まで涙を溜め、キッと睨みつけてくる瞳に宿っているのは、悔しさと怒りと・・・・・そして、悲しみ。
ごめん・・・・・ごめんな・・・・・。
信じきれないような態度を取っていたのはオレの方だ。
土砂降りの雨の中で、想いの全てを一言に込めて伝えたら・・・消えてしまいそうだった君は、オレの腕の中に留まってくれた。
あれから一緒に居る時間が増えたおかげで、今まで知らなかった君の本当の姿が見えてきた。
意地っ張りで天邪鬼、強気なクセにちょっと臆病なところがあるってのは、前から知ってたけど、意地っ張りな部分は段々と顔を隠し始めて。
実は物凄い恥ずかしがりやで、好きって素直に言えない子供っぽいとこもあんだよな。
そんなとこも可愛くて愛しくて、好きだ―っ!!って叫びたくなるけど、それやると本気で怒るから我慢してんだぜ?
(食いたいのも我慢させられてるしよ・・・。)
言葉に出さなくても、伝わってくることはいっぱいある。
本当は全部言って欲しいけど、オレたちにはこれから時間は山ほどあるから・・・君が言いたくなるまで待っててあげる。
その方が刺激的だしな?
ふわふわと触れ合わせていた唇を離した後、オレを見上げた瞳に今宿るのはちょっと恥ずかしさを含ませた嬉しげな光。
「キバ・・・愛してる」
「オレも・・・天姫、愛してる」
End.
-アトガキ-
【mon amour,nara】mims様へ、サイト110000HITS突破記念と銘打って勝手に書かせていただきました〜(笑)
連載『色付く世界』スピンオフSSとして、キバとヒロインAの初対面〜現在を捏造してみたのですが・・・いかがでしたでしょうか?
駄文ですが謹んで捧げさせてくださいませ(汗)
ダメ出しはmims様からのみ、受付となりますのでご容赦下さい。
ここまで読んでくださってありがとうございました♪
2008.4.29 【Crimson Triangle】 by.天姫
[Crimson Triangle*]の天姫さまより頂いた、「色付く世界」のサイドストーリーSSでした。