”初めて逢った時、雷に打たれたような衝撃を受けた”
知り合ってすぐに好きだの愛してるだの言うヤツらは口を揃えてそう言うけど・・・んなわけねぇだろって、ずっとバカにしてた。
相手がどんなヤツかなんて、会ってすぐに分かるモンじゃね―し、まして好きになるなんてありえねぇ。
実際、そう言ってたヤツに限って、す―ぐ別れちまってるのが大半だったし。
オレは今まで、ある程度時間をかけてじゃねぇと、好きになったり付き合ったりしてね―から、運命の出逢いなんてあるはずないって思ってた。
君と逢うまでは・・・。
―Auto Focus―
「毎度―!白眉ケ―タリングサ―ビスです―!」
正午をちょっと過ぎたあたりで丁度良く打ち合わせが終わり、後片付けをしていたら、いつも昼飯や夜食を頼んでるサ―ビス会社の兄ちゃん(うみのサンって言ったっけ?)が、ランチの入ったボックスを肩にかけて入って来た。
あ―、腹へった・・・
今朝は急いでたから朝抜きだったんだよな―って・・・ん・・・・・?
毎日のように繰り返される様子を何気なく見ていたオレは、普段と異なる景色に、つい意識を集中する。
あれ・・・誰だ・・・?
通常なら一人で配達に訪れるはずのうみのサンの後ろに、ちらちらと見え隠れする影。
ボックスから食事を取り出しながら何やら説明してるっぽいから、新人か?
支払いをしているゲンマさんが、微妙にニヤニヤ笑ってるっつ―ことは、女なんだろうな。
そう言ってもゲンマさんのキャパは広ぇからなぁ・・・
そんな事をぼんやり考えながら書類を束ねて手に持った瞬間、オレの目はその姿だけに焦点が合わさって動かなくなった。
シャツの袖から見える、柔らかくてしなやかな動きをする腕。
キュロットスカ―トの下から伸びる、スラリとした脚。
制服のボルド―とのコントラストが綺麗な、健康そのものって感じの肌の色。
キャップから覗く、赤味のちょっと強めな茶色の長い髪。
気の強そうな瞳に浮かぶ真剣な眼差しと、キュッと引き締められた唇。
何もかもが、周囲から鮮やかに浮き上がり、脳に刷り込まれちまって目が逸らせねぇ。
まるで世界の全ての人が消え去って、オレ以外の人間に初めて出会ったかのように見つめていると、何か発せられた言葉に反応して、そのコは弾けるように笑った。
その大輪の花が開いたような笑顔に・・・オレの心臓は撃ち抜かれちまったんだ。
零れるような笑みを浮かべたままのそのコを、閉められたドアのガラス越しに見送っても、目に映るのはさっきの姿ばかりで・・・。
君は、誰・・・?
一瞬でオレの心に入り込んだ、君は誰・・・・・?
忘れることの出来ない鮮明な印象だけを残して消えた、君は一体、誰・・・・・・・・?
「・・・・・バ?キバ、おい?キバ!!」
「・・・・・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・え?」
「ぼけっとしやがって。何やってんだよ・・・って、顔・・・・・赤ぇぞ?」
「・・・あぁっっっ!!」
「なっ、なんだぁ!?あ―――っ!ばっかやろう!!」
シカマルの声に我に返ったオレは、書類をブン投げてゲンマさんに話を聞きにすっ飛んで行った。
「ゲゲゲゲゲンマさんっっっ!!!!」
「犬塚・・・俺はどこぞの妖怪か?」
「んなことよりっ!さっきのコ、誰っすか!?」
「あぁ、ケータリングの?」
ブンブンと首が落ちる勢いで頷く。
「ははぁん・・・?(惚れたな?)」
ニヤリと笑ったまま何も言わないことに痺れをきらし、食ってかかる。
「誰なんっすか!?」
「・・・教えない」
「えぇ!?何でぇ!?」
「明日、また来るから自分で聞けよ?」
「・・・・・明日」
教えてくれないことに気落ちしていると、ゲンマさんが耳打ちして来た。
「きっかけは自分で作るモンだぜ?」
”初めて逢った時、雷に打たれたような衝撃を受けた”
そんなことを言うヤツらに教えてやりてぇ。
雷だ?
そんなモンじゃねぇよ。
本当の相手と初めて逢った時は、そいつしか見えなくなるんだぜ?
自動的に焦点が合わさる・・・それが運命の人ってコトだ。
『お待たせしました―、白眉ケ―タリングサ―ビスで―す!』
ほら、今日もまた・・・
君だけにAutoFocus
End.
-アトガキ-
現在連載[色付く世界]が大好評の【mon amour,nara】mims様へ、サイト100000HITS突破記念として書かせていただきました〜♪
スピンオフSSとして、キバとヒロインAの出会い・一目惚れの瞬間を捏造してみたのですが・・・いかがでしたでしょうか?
謹んで捧げさせていただきたいと思いますvv
ダメ出しはmims様からのみ、受付となりますのでご容赦下さい。
ここまで読んでくださったお客様、ありがとうございました♪
2008.4.19 【Crimson Triangle】 by.天姫
今回の連載の黒幕(?)でもある、[Crimson Triangle
*]の天姫さまより頂戴した、キバが恋に落ちた瞬間のサイドストーリーでした。
100000HITS突破記念として、ありがたく頂きますね〜!!
読んだ瞬間に、脳内イメージとぴったり重なる二人の出会いに、絶叫しました。
流石、影の立役者!!(笑)
どうぞ、皆様もいっしょにお楽しみくださいませ。