林檎の部屋で、穏やかに肌を触れ合わせながらすごす幸せな時間。
そんな俺を、突如混乱に陥れたのは
…ガ…
彼女の何気ないたった一音で。
「っ!シカ…マ ル。突然どうしたの?」
彼女の不思議そうな声は、一瞬で俺の中のスイッチを入れた。
お前に悪気なんてないのは分かってっけど。黙ってさらりと流しちまえるほど、いまの俺には余裕がねぇんだよ。
あの公園での告白の夜、彼女の口から零れた言葉にはそんな意味が隠されていたのか。と、気が付いてしまったら、もう感情の制御なんて出来なくて。
怯えるように俺を見上げる顔を、もっともっと歪めたくなった。
林檎のせいだからな、
今夜は、お前が啼いても絶対許さねぇ。
胸の奥で一気に内臓を絞り上げるような苦しさ。口の端を意地悪に歪めると、心の一部を殺して。かすかに震えている身体を組み敷いた。
俺の加虐心を煽ったのは林檎なんだから。覚悟、しろよ――
-extra02 甘い豹変-
後ろからそっと林檎の身体を包みこむ姿勢が好きだ。腰にまわした腕に力を込めて、やさしく抱き締める。
ぴたりと触れ合った肌の表面、感じる脈動。情事後のせいなのか、いつもよりとくとくと高まっている。俺も、お前も。
愛おしさを表し切れなくて。すこしでもそれが伝われば、と肩越しに唇を重ねた。
まだ荒い呼吸を更に乱して、林檎が俺を呼ぶ。ちいさな声。
ふたりに訪れた平穏な幸せを象徴するかのようにやわらかくて。聞いているだけで、じわりと心が満たされていく。
くるりと華奢な身体を反転させて、ベッドの上で向き合う。何度もなんども唇を触れ合わせ、鼻の頭をくっ付けたまま至近距離で瞳を覗き込む。ふわりとこぼれる彼女の笑顔。
「シカマルって、ホントにキスが上手いね……」
なんの揶揄もこもらぬ響きに、何故かすこしだけ悪戯な気持ちになって、わざと虐めるようなことを問うた俺が、間違っていたんだろうか。
「誰と比べてんだよ?」
その問いに本当は深い意味なんてなくて。林檎は笑ってさらりと受け流してくれるもんだとばかり思っていた。比べてないよ、とほほえむんだろうって。
「誰って 我、……」
ガ……
今、「我」って言ったよな。
我愛羅、か。
じゃあ、林檎と彼はそんなことまでする仲だった、という事なのか?
我愛羅さんにこうされるのは嫌じゃなかったけど、奈良さんとだとやっぱりすごく嬉しい
あの、夜の公園での言葉が、突如として俺の脳裏にうかぶ。
鳩尾の奥では濁った想いがぐるぐると勢いを増している。
キスをするだけでとろけるように淫靡にゆるむその表情を、我愛羅にも見せたのか?
やわらかい唇を、俺よりも先に我愛羅が味わったのか?
いや。
先だとか後だとかはどうでもいいことで。そんな下らない低次元の問題に囚われる気などなかった。
林檎はいま、俺を選んで傍にいる。その事実に満足していればそれで充分だと、何度も自分に言い聞かせる。
なのに我愛羅とのことを思うと、それだけで堪らなくて。
嫉妬なんてばかばかしい。くだらない。落ち着けよ、俺。
諭す言葉のいっぽうで、湧き上がる衝動。コントロール不能の勢いで暴れる感情。大人げないけれど、彼女に思い知らせたい、そうしないと気が済まない。
身体を起こすして上から覆い被さると、逃げられないように林檎の両脇に手を突く。
見つめる視線はたぶん鋭く棘を含んでいる。自然に顰めてしまう眉根を止められない。
「っ!シカ…マ ル。突然どうしたの?」
林檎の不思議そうな声は、一瞬で俺の中のスイッチを入れて。
「突然、じゃねぇだろ?」
「え…」
たとえ俺たちが付き合う前のことだったとしても、聞いてしまった以上はそんなに簡単に忘れることも出来ない。
正確には聞いてはいないけれど、お前の言葉で簡単に推測できてしまった。もっと俺がバカだったらよかったのに。気付いてしまった。
林檎の困った表情は、俺のなかのしずかな怒りを増殖して行くだけ。
両腕を力任せに押さえ付ける。痛みを訴えるように眉間に皺を寄せた顔が、なおさら加虐心を逆撫でするのだと、お前は気付いているんだろうか。
首筋にきつく吸い付くたびにちいさく漏れる呻き声を、もっと苦しく切羽詰まらせたくなる。もっと、もっと。もっと。
「シカマル、痛 い」
「うっせー、黙って従え」
荒々しく唇を塞ぎ、口内を貪る。
訳が分からないといった表情。お前のせいなのに、なんでそんな顔してんだ。
澄んだ視線に、抗い難い苛立ちを覚えた。
「何で急に」
何でって、分かんねぇのかよ。
「林檎のせいだろ」
「シカ…?」
どんな表情で我愛羅からのキスを受け入れたんだよ。
んな、怯えるような顔しても、今夜は絶対許してなんてやらねぇからな。
「自分で考えろよ」
意地悪に口の端を歪めて笑う。
頭のなかでは我愛羅の腕の中にいる林檎の姿が、明瞭な残像のようにくり返しあらわれる。
なんども、なんども。
翻弄するように理性を穿ち続けて、苦しかった。
「何、分かんねぇの」
「……うーん、」
首を傾げる林檎の姿に、醜い嫉妬心が跳ね上がる。
脆い理性は、呆気なく崩れた。
掴んだ両腕から掌をすべらせる。
両手の指をきつく絡めると、林檎の顔の両脇でぐっと押さえ付ける。すこし痛いくらいのほうがちょうどいいんだ。
唇を歪めた表情のまま、視線で嬲る。
マジでわかんねぇのかよ?
「じゃあ、分からせてやるよ」
耳元にわざと熱い息を吹きかける。
お前が、こんな風に耳の傍で低い声を注がれるのに弱いってことは、分かってんだ。
ほら、もう肩が震えてんじゃねぇか。
「じっくり、時間をかけて……な」
「え……っ!?ん…っ」
耳たぶを甘噛み。お前は耳も弱いから。
林檎の身体は俺の下でちいさく撓って、俺から逃れようと身を捩る。
んなことされっと、ますます俺の感情を煽るだけだっつうの。
「なぁ、林檎……抵抗すんなって」
耳の窪みに熱い舌を這わせて凹凸をゆっくり嬲る。ちいさく息を吐き、鼓膜の奥に掠れた声を注ぎ込む。
「抵抗したって無駄だって、もう分かってんだろ?」
「ん…っゃ…だ…っ」
絡めた掌を必死で押し返そうとする弱い力を、上から無理やり捩じ伏せた。
囁くたびにふるえる身体は可愛いと思えるのに。
嫉妬で自制心を失った俺は、林檎をもっと虐めたくて仕方なくて。
「やだとか言ってっけど、」
「……っ」
「林檎も、満更でもねぇんじゃねぇの?」
「…ホントにっ……や…だ…」
消え入るような声で反抗する彼女に、苛立ちと征服欲を煽られて。
「じっくり分からせてやるっつってんだろ?」
一気に身体の位置をずらすと、既に屹立して薄紅に色付く突起を唇に含んだ。
「んあっ……」
「こっちは随分素直じゃねぇか」
もう一方の突起を指先で軽く抓むと、ビクッ、と身体を跳ねあがらせる。
もっと弄りたくて、虐めたくて、もっと啼かせたくて。
舐める速度を上げながら、指先での愛撫も早めた。
「っや……!……っ」
表情を盗み見る。
林檎は自由になった片手で口元を押さえ、眉間を厭らしく歪めている。
「何してんだよ?」
「……っ、ふ」
「それじゃ、林檎のヤラシイ声聞けねぇだろ?」
突起から顔を離して林檎の顔をじっと見つめると、細い両手首を束ねて片手で掴む。
咽喉の奥を鳴らして漏らした笑いは渇いている。
拘束した両手を林檎の頭上へと移動して。ふたたび顔を耳元に近付けると、思い切り意地悪な声で囁いた。
「お前のエロい声、ちゃんと聞かせろよ」
「んっ……っやめ!」
耳たぶを愛撫しながらベッドサイドに手を伸ばし、さっき外したネクタイを手に取る。
「ちょっと待て、な?」
不思議そうに俺を見上げる林檎の瞳を覗き込むと、悪戯にニヤリと笑って。手早く両手首を頭の上で縛り上げた。
「っシカマル…やめ、て」
「お前、それって俺を煽ってんの?」
「い、や……」
「だから 逆効果だって」
胸の突起を再び指先で弾きながら深く口付ける。林檎は切なげに眉を顰め、呼吸を荒げた。
甘い吐息を漏らしながら、精一杯の力で俺を睨む。それを見た俺はますます欲情を煽られる。
「そんな潤んだ瞳で睨まれたって、全然怖くねぇよ」
「…シカ っ」
さっきつけたばかりのキスマークを辿るように首筋に唇を落とし、露わになった脇の窪みに舌を這わせた。
びくり、身体を揺らした林檎の顔を凝視しながら、態と意地悪に問いかける。
「へぇ、ここも弱ぇんだ」
林檎って思った以上に淫乱なのな?
「ちがっ……」
「何がちげぇんだよ」
すっげ、イイ反応してんじゃねぇか。自分でもどうしてこんなに意地悪な声が出せるんだろうと思う。思うけれど、意地悪な声を出せばだすほど、彼女の反応がよくなる。
硬く尖り切っている突起を攻め始めると、予想通りに腰を撓らせ胸を突き出した林檎に更に淫猥な言葉をかけた。
「こん位ですげぇ感じてんじゃん」
マジでエロい身体だな。
「感じて、なんか っない…っ」
必死で声を抑える為に下唇を噛んでいる林檎の姿を見て、俺はちいさく笑った。
今に、そんなんじゃ抑えられない位の快楽を与えてやっから。
覚悟しろよ?
なんの予告もなしに、下肢へ手を伸ばす。
すでに溢れていた蜜を掬い上げるように指先で優しく襞を辿る。
「!…っ」
ククッ、漏れた笑いはいつもに増して意地悪にひびく。
ああ、俺ってやっぱSだわ。
「やっぱ林檎も満更でもねぇんじゃん」
すげぇ、とろとろ。耳元で囁きながら愛撫の手を早めて。
ちいさく揺れる腰を嘲るように鼓膜を犯しつづけた。
「俺の指で感じてんだろ?」
「ち、が……っ、」
「腰、動いてんじゃねぇか。嘘つくなよ?」
「…やめ て、っ」
「本気?」
「……っ!!」
「本当にやめてほしいって思ってんの?」
敏感な部分はすでに膨らんでいる。
あふれ続ける蜜を塗りつけて、やわらかく擦り押し潰せば、林檎は一際甘い嬌声を漏らしながら、大きく腰を揺らした。
「ここ、すげぇ硬くなってんだけど」
林檎はいま、俺の指と俺の声で感じてんだろうが。
もしかしたら、両手首を拘束されてっから、余計に敏感になってんじゃねぇの?
いつまで意地張るつもりだよ。
下肢への愛撫を続けたまま、林檎の顔を見つめる。
「シカ…っ、なんで?」
頬を上気させ、目尻をほんのりと朱に染め、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませて。
眉間に寄った皺と、薄く開いた唇が、余りにも扇情的で。
ったく、なんつう顔してんだよ……
そんな姿見せられたら、俺の方が余裕なくなっちまうだろうが。
「な、んで……」
「まだ分かんねぇの?」
今度はやさしく唇を塞ぐ。かるく下唇を食むと、そっと舌を熱い口腔内へと捩じ込んだ。
絡め合った舌同士がとけて混ざりあう。互いの唾液と一緒にふたりがとろけていく。とろとろと。
「シカマル……?」
ふっ、と小さく息を吐き出して、もう一度林檎の顔を見つめる。
乱れた彼女の頭を撫で、ほそい肩口に顔を埋めた。
「わりぃ……もっとじっくり行くつもりだったんだけどよ」
「……ん…?」
「俺、もう限界……かも」
◆
耳元で囁きつづけられる意地悪な言葉。
今夜のシカマルは、いつもの彼とは随分違っていてる。
続く快楽に混乱した頭のなかで、私は必死でその理由を追い求めていた。
シカマルが豹変したのは、何故だったんだろう。
あのとき私とシカマルは、なんの話をしてた…
なのに
休む間もなく与えられる巧みな愛撫と、耳の奥へと注がれる掠れた声で、思考はすっかり麻痺して。
「な、んで……」
縋るように問いかけると、私を見下ろしていたシカマルの表情が、一層切なげに歪んだ。
「まだ分かんねぇの?」
問いを返してきたシカマルは、さっきより余裕をなくしている。
眉を顰めた表情も、頬に掛かる黒髪も、喩えようもなくつやっぽくて。
下肢で蠢く指が触れている部分の、もっと奥。ずっとずっと奥の方で、じわじわと疼くものがある。更なる快楽を求めて、背筋がふるえる。腰がびりびりとしびれている。
そっと唇を塞いできたシカマルに、すこしホッとしていると、軽く下唇を食まれて。
熱い舌が口腔内へと捩じ込まれ、頭の芯まで痺れた。
眩暈が、する。
ん、シカマル なんだか急に優しくなったみたい。
もしかして、許してくれたのかな。それとも、余裕がなくなってきたの?
深く絡め合った舌同士が口内で溶けて混ざり、互いの唾液と一緒にふたりがとけていく。
さっきまでの、意地悪で攻撃的なシカマルは何だったんだろう。
「シカマル……?」
ふっ、とちいさく息を吐き出して、私の顔を見つめて来たシカマルは、もう、いつものシカマルだ。
淡い笑みを浮かべる顔は、息が止まりそうに綺麗で。それに見惚れていると、やさしく頭を撫でられた。
そのまま崩れ落ちるようにシカマルの身体が私へと近付いてくる。
肩口に顔を埋め、思ったより頼りない声を発した彼に、胸をぎゅっと掴まれるような愛おしさが込み上げる。
「わりぃ……もっとじっくり行くつもりだったんだけどよ」
「……ん…?」
もしかしたら、我愛羅さんとキスをしたことに気付いたのかな。
シカマルは勘が鋭いし、私の不用意な一音で全て分かってしまったのかもしれない。
「俺、もう限界……かも」
さっきまでとは打って変わって、そんなにやわらかい口調で喋られたら、ドキっとするじゃない。
「シカマル……好き」
「あぁ」
「シカマルだけが、好き…」
「俺も」
照れた表情で私に微笑みかけるシカマルに、ふっ、と気を抜いたら、次の瞬間にシカマルの表情が妖しく歪んで。
前触れもなく、なかへと指が挿し込まれて喘ぎがもれた。
「はぅ!シカ もう、」
シカマルは鮮やかに両足の間へ身体を割り入れると、膝裏をしっかり押さえて
「も、分かった、から」
「まだ、分かって、ねぇだろ」
湿った粘膜へと執拗に舌を這わせながら、内壁から溢れる蜜を掻き出すように軽く指を曲げて掻き混ぜた。
シカマルの舌先が硬く膨らんだ突起を捉える。唇で軽く吸い付きながら小刻みな愛撫を繰り返す。
あ、あ、あ……。
激しい快楽に翻弄されて、また意識が朦朧としてくる。
「……っん……も、」
「林檎…イきそう?」
途端に内壁を抉る指の速度と舌の動きが激しさを増す。
小刻みに腰が痙攣をしはじめる。
「…イ……っ」
脳内が真っ白になりそうな快楽に溺れようとしたのに。
絶頂感が訪れる寸前。
シカマルはするりと指を抜き秘部から顔を離すと、身体を上方へずらした。
「なん、で……っ?」
目の前で、シカマルが蜜の絡みついた指を緩慢に舐めている。あまりにも淫靡なその姿。見ていると頭がくらくらして、気を失いそうだ。
なのに、身体の奥は果たし切れなかった疼きがぎゅうぎゅうと込み上げて。痛い位に痺れていた。
「林檎のせいだ、っつったろ?」
「意地…わる……っ」
「んな、簡単にはイかせねぇ」
抑えきれない最奥の熱に浮かされる。
無意識に腰がゆれて、目尻を涙が伝った。
◆
「腰、揺れてんじゃねぇか」
「……っく」
ククッ。やっと泣いたな……林檎。
つうか、理由にも気付いたか。
生理的にあふれた涙を舌で掬いあげる。かわいい、かわいくて堪らない。
薄い瞼に、唇をそっと押し当てる。
そのまますべり降りるように頬に軽いキスを繰り返す。感覚の研ぎ澄まされた林檎の身体は、小刻みにふるえていた。
「…っ、……シカ」
「どうして欲しいんだよ?」
しっとりと汗ばんだ肩に優しく歯を立てて、限界を遥かに通り越しそうな情動を抑えつける。
「手、ほどいて……」
「あ?それだけでイイのな」
「……っ」
きつく縛りつけていたネクタイの結び目を解き、赤くなった手首に一つずつキス。
俺の唇が触れるたびに肩が揺れる。
ふるえる身体に欲情を煽られながら、まだ潤んでいる林檎の瞳を覗き込む。
……俺はもう、限界だっつうの。
早くお前ん中に入りたくて、堪んねぇ。
「これで、イイんだろ」
「……っゃ……」
もう、これ以上我慢しろって言われても、無理かもしんねぇ。
「じゃ、ちゃんと俺に分かるように言えよ」
「シカマル、が……」
林檎の顔を見つめたまま、熱く息衝いている自身の先端を、蜜で潤んだ窪みに押し当てる。ぬるり、伝わる感触で頭のなかがぐちゃぐちゃになる。
激しく貫きたい欲に必死で抵抗しながら、言葉の続きを待った。
「ちゃんと言わねぇと、このまんまだぜ?」
焦らすように緩く粘膜同士を擦り合わせるだけで、腰が震えるような快感。
……っく、マジで限界。
早く、言え……林檎。
気を反らすように固く瞳を閉じると、林檎の腕がそっと俺の腰に添えられた。
もう、無理だ……待てねぇ。
すこし力を加えれば、ぬるりと俺を飲み込んでしまいそうな感触。
引き寄せられるように浅く先端を埋めて、少しずつ先へ進めようとした刹那
「シカマルが、欲しい……」
甘い声が俺を欲するのと同時に
細い腕の力とは思えない強さで腰が引き寄せられた。
あ、あ。叫びのような声が、部屋に満ちる。
「くっ……、林檎」
一気に最奥を突いたあとは、その動きを少しずつ緩やかにするつもりだったのに。
頭がくらくらするほどの愛おしさと、突然襲ってきた激しい快楽で律動が止まらない。
俺の名を呼ぶ声が、甘く凝る。とまらない。とめられない。
僅か数回内壁を擦り上げただけで達してしまった林檎を、休ませてやりたいと頭では思うのに
「わりぃ、止まん…ね」
「シカ、っ…も、無理…ムリ」
貪るように激しく突き上げ続けて、互いに切れ切れの吐息を漏らした。
「…林檎、…力…抜け」
左右に首を振って、切ない表情で俺を見上げるその顔。
見てるだけでやべぇ…
なんなんだその表情。俺を殺す気か。
「っ、シカ…また…」
ふたたび達した林檎の内壁が、ぎゅうっと収縮して俺を締め付ける。何度もなんども。どくり、ぴくり。
粘膜同士の境界が消えて、拍動は同化した。
「シ、カ……」
「…うっ…く」
呼ばれる名前にすら過敏に反応する身体。
うごきつづける腰。精神の力で制御することはもう不可能だった。
腰の動きは惰性に任せたまま、身を屈めて貪り合うように唇を重ねると
俺たちは同時に
頂点を掴んだ――
◆
(で、理由分かった?)
(うん。キスで…嫉妬してくれたの?)
(ああ。じゃ、まだまだこれからたっぷりお仕置きな?)
2008.05.21
告白の夜にヒロインがポロッと我愛羅さんの名前を漏らしてしまったのは、この話のためのネタ振り