生ぬるい夜風に吹かれ、歩く。
 続く沈黙に、いつもの心地よさはなく、駅までの道が果てしなく遠く感じた。

 胸の奥にある嫉妬の情が、さっきの抱擁シーンの記憶と混ざり合えば、鳩尾が焼け焦げそうな化学変化が起きて。否応なしに翻弄される。

 何故あのとき、彼女を支える男が、自分ではなかったのか。すぐに追いかけたのに、どうして間に合わなかった。
 考えても仕方ないことを幾度もいくども反芻し、ガラス細工の理性は崩壊寸前だった。


「あの、奈良さん」
「ん?」
「ありがとうございました」

 森埜の声で我に返れば、すでに駅の改札は目の前。見下ろした彼女の瞳には、乾かない涙の痕が光っていた。

「まだ、目…赤ぇぞ。どっか寄って時間潰すか」

 差し出した掌で、森埜の頭をポンポンッと撫でる。肩に手をかけて、もっと近くで顔を覗き込む。

 その縋るような上目遣い、やべぇだろ。
 そりゃ、我愛羅じゃなくても抱き締めたくなるって。

 そのまま胸に閉じ込めてしまいたい気持ちを必死で抑えて、口の端をキュッと上げた笑みを作る。

「ほら、行くぞ」

 呆然としている森埜の手を引いて、歩き始めた。

 絡み合った指先を伝う温もりから、もしもすこしでも抵抗の意志を感じたなら、判断力を失っていた俺は、もっと強引になれたのかもしれない。
 素直に掌を掴む森埜のなかで、どんな想いが錯綜していたのか。
 そのときの俺に、推し量る余裕はなかった――



-scene15 翻弄-






「落ち着いたかよ?」

 ベンチに座り夜空を見上げ、ただ黙って過ごす。その数十分が森埜の瞳を鎮静化するのに比例して、俺のなかの澱んだ波もすこしずつ鎮まっている。

「はい、すみませんでした」

 笑って俺を見上げる表情からは、もう先刻までの憂いが消え去って。それはこうして俺と一緒にいたせいなのかと、奇妙な優越感をかんじる。

 かすかにふれあう肩がくすぐったくて、視線を月から逸らせない。

「何を気にしてんのか知らねぇけど、あんま無理すんな」
「そう、ですね」

 すぐ傍で微笑む気配の心地よさに、さっきまで崩壊寸前だった理性はすっかり回復していた。
 並列で座ったまま向き合えば、互いの膝が触れて。肩から伝わるのとは別の感触に、背筋を軽い衝撃が走る。
 それを無視して森埜の両肩に手を掛けると、不思議そうに見上げる双眸を覗き込み、出来るだけ優しい微笑みを作った。

「ひとりで抱え込むなよ?」

 ふわりと口元を綻ばせて頷く顔に見惚れた直後。
 何気なく紡がれた森埜の言葉に、恐らく深い意図はないのだろうが。

「奈良さんや我愛羅さんに、こんな風に心配して貰えるなんて 私、幸せ者ですね」

 その台詞に、内臓を締め上げるような苦しさが再燃した。

 なんで今、そんなことを言うんだよ。俺じゃなくて、我愛羅でも別に構わねぇのか。

 汚濁した熱が脳から手足の末梢へ向けて、圧倒的な速さでコントロール不能の指令をくだす。
 変わらず俺を見つめる森埜の前で、歪む眉根を止められない。

 お前のなかで、一体俺はどんな位置付けなんだ。我愛羅よりも低いのか、高いのか。近いのか、遠いのか。
 普段は気にもしない陳腐な疑問に囚われて、衝動を抑えられなくて。

 次の瞬間。
 森埜のほそい身体を思い切り抱き締めていた。

「俺の前で、我愛羅の名は出すな」
「……っ、奈良さん?」

 彼女が苦しげに息を乱すのに気付いても、もう止められない。
 我愛羅の腕のなかで肩をゆらす姿が、何度もなんどもフラッシュバックして。ますます抱きしめる腕に力がこもる。

 身体に残った、我愛羅の抱擁の記憶など消えちまえばいい。肩をゆらして泣くのは、俺の胸のなかだけにしろ。

 やがてそっと背に森埜の両手が回され、やさしく撫でるのを感じて。抱きしめているのか、抱きしめられているのか分からなくなった。
 腕の力をゆるめると、まともに向き合えずに、顔を反らす。

「わりぃ……」
「大丈夫ですよ、嫌じゃなかったですから」

 その言葉を聞きながら、再び湧きおこるのは醜い感情で。

 じゃあ我愛羅から抱き締められんのも、嫌じゃなかったから受け入れてたのかよ?

 そんな自分を悔いながらも、なかなかその想いを消せなかった。


「奈良さん…?」
「、そろそろ帰るか」

 やけにすっきりした表情の森埜を見つめながら、どうしようもない切なさがこみあげる。
 見えない手で、心臓をぎゅっと絞り上げられるような感覚に、シカマルは黙って耐えていた――







 翌日以降。
 会社での森埜の様子は、いつもと変わらず、ひとり彼女の華奢な身体の感触を反芻して、眠れぬ夜を過ごしている自分が、なんだか馬鹿みたいに思えた。

 はー…っ。
 やっぱ俺ばっかりが意識してんだよな。

 無意識でもらした深いためいきを、キバに目敏く見咎められて。にやにやした視線を向けられると、尚更ためいきを吐きたくなる。

「シカちゃん、さっきからどうしたんだ」
「別に、何でもねぇって」
「でも、ためいき」
「放っとけよ」

 会話に反応してこちらに視線を向けた森埜の顔に、つい心が反応してどくりと心臓が鳴った。

 つうか、こんな風に色恋沙汰で気持ち乱してる場合じゃねぇっての。プロジェクトの進行に支障が出るようなこと、リーダーの俺がする訳に行かねぇしな。




「奈良さん、具合でもお悪いんですか」
「いや、そういう訳じゃねぇよ」

 心配そうな、眉を顰めた森埜の顔に、馬鹿みたく激しくなる動悸。
 ったく、勘弁してくれよな。

「なあなぁ、そう言えばさ」

 会話の流れを変えるように発されたキバの言葉に、シカマルは正直なところかなりホッとした。

「女の子って指輪とかのアクセサリー好きな子多いのに、林檎ちゃんも天姫ちゃんもしてねえよな」
「天姫ちゃんは、飲食だからじゃねぇの?」
「違いますよ。天姫も私も、金属アレルギーなんです」

 ん?森埜はたしか、いつもピアスしてたような気がするけど。
 ちらりと彼女を見ると、浮かんだ疑問を何気なく口にした。

「お前、ピアスしてんだろ」
「私、ピアスはPtかWGなら何とか大丈夫なんですよ」
「へぇ…」
「バングルも大丈夫、かな。でも、指輪とネックレスは出来ませんね」

 そう言えば、確かに森埜がネックレスを身に着けてる所って見たことねぇな。

「じゃあ、天姫ちゃんは?確か、ピアスもしてないじゃん」

 そうだったっけ?
 流石キバは、天姫ちゃんのこと良く見てんだな。

「天姫は、金属系全般がダメみたいですよ。眼鏡のフレームですらダメだって言ってましたから」
「マジで?じゃあ、結婚指輪とか出来ねえじゃん」
「そうですね」

 つうか、キバ。
 まだ付き合い始めたばっかなのに、もう結婚指輪の心配してんのか。ちょっと気が早ぇ気がするけど。

「じゃあ何ならいいんだろ?」
「ちょっとチープな感じのシルバーリングなら大丈夫、とか言ってたかも」
「シルバーって、結婚指輪なのに?」

 森埜はプラチナかホワイトゴールドなら大丈夫。
 って、何を俺はそんなこと記憶に留めようとしてんだ。
 考えてみれば、どっちも結構高いもんじゃねぇの?

「PtとかWGって、安くねぇんだろ?」
「そうですね。だから、大きな仕事が終わった時なんかに、自分へのご褒美として買うんです」

 ほら、これも。と、言いながら髪の毛を掻き上げて耳をちらりと見せる森埜の仕草に、一際どくりと胸が騒いだ。

 いつも隠れてるもんをそんな風に無防備に見せられっと、男ってのはどきどきするもんなんだよ。

「あの仕事の後に買ったんですよ」
「へぇ…」

 気のない返事をしながら、すこし赤くなりかけている顔を背けると、キバが俺のことを覗き込んで来た。なんだよその楽しそうな表情。
 ったく、こいつ。俺の気持ちに気付いてて面白がってんだろ?

「なあ、林檎ちゃん。この仕事終わったら、また買うの?」
「たぶん」
「じゃあさ、せっかくならシカマルに買って貰えよ」
「え?」
「プロジェクトのリーダーなんだしさ。な、奈良さん?」

 キバの奴、突然何言い出すんだよ。
 すでにさっきの耳ちら見えで顔が赤くなってんのに、さらに煽るようなこと言うなって。頼むから。

「な、な。それが良いって」
「あの、犬塚さん?」
「シカちゃんのご指名で来て貰ってるんだから、プレゼントしてあげるよな?」

 プレゼントとか言うな、マジで。
 ほら、森埜も不思議そうな顔してんじゃねぇか。

 つうか、顔あちぃ…――


 頭のなかでは、さっきちらりと見えた小さな耳と、そこから繋がるうなじの白い肌がぐるぐるとなんども廻って。あの晩、抱きしめた体温まで再現されていた。

 急に席を立てば、変に思われるんだろうけど。
 “プレゼント”なんて改まった言い方されっと、妙に意識しちまって。
 このままここに居て、ポーカーフェイスを保つ自信ねぇわ。

「俺、ちっと煙草吸ってくっから」

 行ってらっしゃーい。笑いを含んだキバの声を聞きながら、慌てて席を後にした。







「天姫ちゃん、あのさァ」
「何ですか?」
「シカマルと林檎ちゃんのことなんだけど」
「ええ」
「やっぱ、どうにかしてあげらんねぇかな?」
「この前、いまは無理だって話したばっかりでしょ」
「でも、最近のシカマル見てらんねぇんだって」

 犬塚さんの言葉には、いつもみたいに茶化す調子はない。
 ということは、本当に奈良さんのことを想って言ってるんだろう。面白がっていられない位に、奈良さんの様子が苦しそうなんだろうか。
 でも林檎、ホントに恋愛に関しては鈍いからなぁ。
 それなりに今まで彼氏がいたことも知ってるし、決して奥手でも計算高くもないんだけど。
 うーん……

「天姫ちゃんでも、何とか出来ねぇ?」
「ちょっと、週末にでも探り入れてみます」

 途端に、弾けるような笑顔になった犬塚さんに抱き締められた。
 もう。その尻尾振ってじゃれてくる犬みたいな仕草に、私が弱いって気付いてるんでしょ。

 八重歯を見せながら近付いてくる犬塚さんの顔は、すごく可愛いのにキレイだ。どうやって林檎を誘導尋問にかけようかと考えながら、そっと目を閉じて。
 啄ばむようにやさしく触れる、やわらかい唇の感触を味わった――







「桃地から電話、」
「え、私ですか」
「そ。あんたに代わってくれってよ」

 さっきから暫く電話で誰かと話していた猿飛さんに、急に声をかけられて私は書類から顔をあげる。

「何か、大事なお願いがあるらしぃぜ。3番な」

 デスク越しに意味ありげな視線を向けながら、保留ランプの点滅する電話を指差す仕草に、慌てて受話器を上げた。


「お電話代わりました、森埜です」
「森埜 悪いな、忙しい所」
「いえ、お疲れ様です」
「ちょっと、どうしても頼まれて欲しいことがあんだけど」
「何でしょうか?」
「今度の土曜の昼間、都合どうだ?」
「今のところ、何も予定は入ってませんが。何か?」
「俺の代わりに我愛羅にある式典に出てもらう事になってんだが、お前も一緒に行ってくれねェか?」
「……はい」
「じゃあ、詳しくは我愛羅から連絡入れさせる。頼んだぞ」

「桃地、何だって?」
「あ…はい。社長の代わりに、我愛羅さんと一緒にレセプションに出席してほしいと」
「ふぅん…」

 猿飛さんがさり気なく視線を流した先には奈良さんがいて、何故かいつも以上に眉を顰めているのが目に入った。

「別に休みの日だし、構わねぇよな。シカマル」
「何で俺に、んなこと聞くんだよ」
「じゃあ、行ってきますね?」

 どこか辛そうな表情の奈良さんが気懸りで。
 “俺の前で、我愛羅の名は出すな”
 あの晩の切羽詰まった彼の言葉が、何度もなんども鼓膜の奥で響いていた――







 レセプションは我愛羅さんのエスコートで滞りなく終わった。もう暗いからという理由で家まで送られながら、私は奈良さんのことばかり考えている。

 何故、奈良さんは我愛羅さんの名前を聞くたびに顔を顰めるんだろう。
 ふたりの間で、過去に何かあったんだろうか。

「どうした、森埜」
「え」
「黙り込んで」
「いえ、何でもないんです」
「そうか。なら良いんだが」

 ふっ、と表情を崩した我愛羅さんを見上げると、急にやさしく腰を抱かれた。
 式典の最中に何度も同じ所作を受けたのに、ふたりきりになってそんなことをされると、何故かどきどきと胸が鳴る。

「 あの、」
「こういう格好をすると、お前も見違えるな」
「 我愛羅さんも、素敵ですよ」

 我愛羅さんの肩越しに青白い光を放つ月が昇っていて、私を見下ろす綺麗な顔立ちを一層際立たせていた。

 涼しげな眼元と、形の良い鼻。
 薄い唇も、本当にキレイ。

 そんなことを考えながらぼーっと見惚れていたら、すこしずつ我愛羅さんの顔が近付いてきて。
 不意に、唇に温かいものが触れた。


 あれ?

 これって、もしかして…

 キス?


 びっくりするほど近くにある我愛羅さんの顔を見つめながら、瞬きすら出来ない。

「森埜。眼を、閉じろ」

 言われるままに瞳を閉じると、ふたたびやわらかい感触が私の唇を塞ぐ。

 我愛羅さんのつけている香水の香りで、頭がくらくらする。
 抱きしめられた腕のなかで、私は混乱させられて、思考回路は瞬時に麻痺した。

 そのままなんどもやさしく唇を塞がれ、困惑したまま立ち竦む。
 そっと顔の離れる気配に目をあけると、我愛羅さんは、私よりもずっと困った表情で、ふいっ、と視線を反らした。

 耳、赤いですよ?


「すまない……突然」

 何も言葉を返せずに、黙って我愛羅さんを見上げる。頭のなかでは、今の行為をどう解釈したらいいだろうと、麻痺していた回路がフル稼働し始めていた。

 腰に手を回したまま歩き始めた彼に、遅れないように足を進めながら、何度も奈良さんの姿が頭に浮かんでくる。



「さっきのは俺の気持ちだ、」
「……」
「考えてみてくれないか?」

 別れ際。耳元で囁かれた我愛羅さんの言葉を、何度心の中で繰り返してみても、考えが行きつくのはひとつの方向で。

 …我愛羅さんにキスされるのは、嫌じゃない。
 決して嫌ではなかったけれど、でも…

 なにかが違う。
 なにか、が。


 何故かとても、奈良さんの顔が見たかった――







 約束の土曜の晩。天姫が林檎の家を訪れると、彼女はめずらしく部屋で煙草を吸っていた。

 たしか、仕事中しか吸わないって言ってたのに。何かあったんだろうか。

「林檎。どうしたの」
「なにが?」
「プライベートでは吸わないって言ってた煙草吸ってるから」

 何かあったのかなって思うでしょう?問いかければ、憂鬱そうに眉根を寄せて、苦しげな顔を見せるから。本気で心配になる。

「ちょっと、ね」

 ちょっと、って顔じゃないでしょう。それ。

「奈良さんと、何かあった?」
「なんで、奈良さん出てくるの」
「違うの?」
「うん。別に何もない、けど」
「そう言えば今日のレセプションはどうだったの」
「無事に終わったよ」
「我愛羅さんとだっけ?」

 彼の名前を出した途端、急に林檎の様子がおかしくなった。

 もう、何だってのよ。
 今日は奈良さんとのことを探り入れに来たはずなのに、なんで違う男の名前で反応してる訳?

「何かあったんだね?」
「ん…実は、」

 眼を伏せて黙り込んだ林檎の肩に手をかける。

「言ってみなよ、別に何を聞いても驚かないから」

 安心させるように笑顔を向けると、林檎はおずおずと口を開いた。

「……キス、されたの」

 ふーん、キスね。
 なるほど。

 って、えぇーーっ!?キス?!?!!
 空耳、じゃないよね。聞き間違いであってほしいんだけど。
 キスって。会話の流れからいえば、どうかんがえても相手は我愛羅さん、ってことになるよね。奈良さんじゃなくて。

「えぇーーっ!?ホントなの?」
「天姫 驚かないって言ったじゃない」

 唇を尖らせて、頬を染める林檎を見ながら、次の言葉が出てこない。

「………」
「でね、全然嫌じゃなかったんだよ」

 しかも、嫌じゃなかったってどういうことなの。それじゃ、まるで、

「我愛羅さんが好き、ってこと?」
「どうなんだろ」
「はっきりしてよ」
「むり。ただ、嫌じゃないんだけど何か違うなって」
「それで?」
「決定的に何かが違う。でも、分からない」
「……」

 この困った子、どうしてくれよう。

「分からなくて。それから、何故か奈良さんの事ばっかり頭に浮かんできて」
 
 まいっちゃうな。と言葉を続けながら、ほうっ、ためいきを吐くように煙草の煙を吐き出す林檎の横顔は、すごく綺麗だった。

「それで煙草、か」
「うん」
「まいっちゃうのはこっちだよ」
「なにそれ」
「言葉通り」

 不思議そうに首を傾げる林檎に、私の方がためいき出そうなんだけど。
 もう、それって恋に決まってるじゃない。なんで気付かない訳?
 しかも、好きでもない男に簡単に唇奪わせるなんて、信じられないし。

「これって、一体何なんだろ」

 ほんとうに困惑しきった表情で、彼女がもうひとくち煙を吸い込む。ほそく、ながく、煙が吐き出されるのを待って、私は決定的な言葉を口にした。

「奈良さんのこと、好きなんじゃない」

 一瞬だけ目を見開いた彼女は、すぐにさっきの憂い顔に戻る。
 自分でもうすうす気づいていたのかもしれない。

「やっぱり、そうなのかな」

 吸いさしをアッシュトレイに押し付けて揉み消すと、林檎は両手で顎を支えて再びためいきを吐いた。

「なんだかね、あのキスが我愛羅さんじゃなくて、奈良さんとだったらもっと嬉しかったのになあって」
「………」
「そればっかり考えて、ほんと参った」

 切なげに呟く親友の姿は、どう見ても恋をしている女のそれで。でも自分の恋心に気付いたのが、他の男にキスをされたから、だなんて なんという皮肉だろう。
 奈良さんにも犬塚さんにも絶対言えないな。

 ひそかな悩みを抱え込みながら、それでも私は彼女を応援したい気持ちでいっぱいだった。

 これから、どうなるんだろ――
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