黒いコートを着て部屋に立っ
ている姿を捉えて私はガクガ
ク震えてしまった。たしかに、
今は寒い季節だからコートを
着ていても可笑しくはない。
でも私の中に恐怖感を植え付
けるには十分なものだった。
少し考えているようだったが
険しい表情でキッチンの方へ
向かっていった。逃げたくて
部屋を移動しようと思った、
でも予想以上にすぐに戻って
きた。慌てて体を縮こませる。


手にはビニール袋を持ってい
る。何のために使うんだろう、
そう思いながら見つめている
と、女の人が動いた。どうや
ら手紙を読んでいたようだ。
手紙をポケットにつっこんで
からチラリと私が傍に置いて
おいたお弁当を見つめていた。
震えながら手を伸ばす彼女。


(―――ダメ!)


私の思いと裏腹に、それを掴
んで彼女はゴミ袋の中にお弁
当箱を押し込んだ。彼女はそ
の為にビニール袋を持ってき
たのだった。涙が頬を伝うの
が分かった。酷い…。私が恭
弥さんだけの為に一生懸命作
ったお弁当を、あんな簡単に
捨てるなんて。憎い、そんな
感情さえふつふつ湧いてきて
いる私なんかには気付かず、
女の人は電話し始めた。どう
やら恭弥さんにみたいだ。

「――、でない」


ポツリと呟くと彼女はそのま
まゴミ袋を持って外に出てい
ってしまった。ガチャリと鍵
をかける音が響く。すぐに無
音が続いた。た す か っ た。


「こ、わか…った…ヒック…」


ポロポロと涙が溢れる。いつ
もの私らしくない、分かって
るけどあんな後だから仕方な
い。見てしまった。あの人が
恭弥さんの、ストーカー。





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