〇white line〇another day | ナノ


▼ camp

『ねえねえミッシェルキャンプしたいよおおおお』

唐突に言い出した娘に皆の視線が注がれる。

『大方またルシウスにでも馬鹿な事を聞いたのだろう』

ふん、下らない・・・と言いたげなヴォルデモートの顔を見るなりミッシェルがヴォルデモートに飛び掛かっていった。

『ちょ!え!?何が起こったの!?』

ナギニは驚きのあまり飛び上がってしまった。

『絶対やるキャンプ絶対やる。あなたはだんだんーーキャンプがーーー』

『やらん』

珍しくミッシェルは引かなかった。

『やるったらやるの!!そこに海があるから!そこに山があるから!』

『やらん』

静かな声でヴォルデモートは言い放ち紅茶を飲み始めた。

『外で飲む紅茶は格別だよ?病みつきになっちゃうよ?』

『インドア派なのだ』

『・・・・・嘘だーーーー!!!明らかにミッシェルより外に出てるもんーーー』

『遊びに行っているわけではない』

ミッシェルを気にすることなく本を読みながら静かに紅茶を堪能している。

『いいもん!じゃあわたし庭にテント張る!!』

ムスッとしてミッシェルが部屋を出て行った。

『だめですよー小さい子をいじめてはいけませんよー』

『小さいか?』

『ええ、体は小さいです』

『態度はでかいがな』

またしてもヴォルデモートがふんと鼻で笑った。

ミッシェルはしばらくしても戻ってこないのでナギニは心配になり庭を見に行った。

そして見るなりすぐさまヴォルデモートのところへ戻ってきた。

『我が君、あの子をキャンプに連れて行かないと後々後悔しますよ』

その言葉を聞くなりヴォルデモートは真っ先に庭へと向かった。

そしてミッシェルの姿を見るなりこう言った。

『そのようだな。少なくとも私が恥をかくことになりそうだ』

『行ってあげましょうよキャンプ』

『それで、お前の言うキャンプはモグラのキャンプなのか?』

ミッシェルが庭に大きな穴を掘っていて全身泥だらけになっていた。

『キャンプってサバイバルなんでしょ?』

目をキラキラさせたミッシェルが笑っているのでヴォルデモートは怒ることが出来なかった。

『出かける前にまずシャワーを浴びてからだ』



3時間後・・・・


『ここでキャンプするんだねー!!!!』

ミッシェルはたいそう嬉しそうにしていたがナギニは気味悪がった。

『こんなところ初めての子供キャンプに適したところではないと思いますけど』

天気は曇り、何より切り立った崖の上だ。

『下手すると崖の上からポニョっちゃいますよ・・・』

崖の下なんて見たくもないという顔でナギニが言った。

『もーえろよもえろーーよーー♪』

ミッシェルが歌いだしたがナギニはそれを止めた。

『テント燃えちゃったら大変ですよ?』

二人と一匹は静かに夜を迎えることとした。

テントと言えばもちろんヴォルデモートの事なので広々としたテントを用意していた。

『これで今日は全員別々で寝られるわけだ』

ヴォルデモートの瞳はランプの明かりで怪しく光り口元は珍しくニヤッと笑って見せた。

ミッシェルのいうサバイバルな夕ご飯を食べると体も温まり程よい眠気に誘われ始めた。

一人を除いては。

そっとヴォルデモートはテントを抜け出すと夜闇に紛れ崖の下に広がる海の音を聞きながら目を瞑って佇んでいた。

暗闇に黒ずくめの男はよく馴染みまるで背景に溶け込んでいるかのようだった。

一人でしばらくそうしていると後ろから何かが足元をつかんだ。

『ダディ一緒に寝よう』

寒さで凛とした空気の中に温かさが溶け込んできたようだった。

ヴォルデモートは自分一人きりの気分を味わっていたがそんな時間も長くは持たないようだ。

『一人で寝ろ』

『一緒に寝たほうがあったかいよ』

いつの間にか自分のほうがミッシェルに慣らされてしまっている。

人の温かみ。そしていつも誰かと共有する時間。

今までそんな時間を必要としてこなかった。

しかし味わってみると悪くない、と思うようになってきてしまっていた。

『ダディっていつも庭でこんなことしてるの?』

『そう思うか?』

『うーーーん。でもいなくなったらわたし寒くてすぐ気づくよ』

わははははっとこの夜闇さえ吹き飛ばしてしまいそうな笑顔だ。

ミッシェルは冷たくなっているヴォルデモートの手を握りテントへと歩き出した。

そして結局広いテントで狭い思いをしながら眠る羽目になったのであった。





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