「如月、遊びに来たぜ」

病室のドアを開けて入ってくる。もう学校はすでに始まっていて、前みたいに早くはこないけれど来てくれる。

「リハビリは今日はもう終わった?」

うん。と言いたくて、頷いてみせる
彼はへらりと笑って私の頭をくしゃくしゃに撫でできた

体がまだそこまで自由に動かなくて、すぐには抵抗できなかったけれど、別に嫌じゃない


『"わたしもはやくがっこういきたいようなそうでないような"』
「どっちなんだよ」
『"わからない。でもちょっとこわいかな"』
「心配することねぇって。俺と同じクラスなんだし。なんかあれば助けてやるよ」

"ありがとう"と、返して頑張って笑う

本当は嬉しい
でも、それはわたしに対する罪意識なんだ。と、思うとこころがチクリと痛んだ。あなたは全然悪くないの。そんなこと、思わなくてもいいのに…
まだ不完全な私は、そんなことすら彼に伝えられない



『"あのね、もうすこししたらいえにかえれるってさ"』
「やったな」
『"うん。かえったらためてたてれびいっぱいみる"』
「録画な。はいはい。俺も一緒に見ようかな」
『"みしてやらんこともない"』
「なんだよそれ」
『"あたらしくはじまったいくたとうしろうのどらまみたい"』
「あー、あれか。よかったぜ。お前生田十四郎本当好きだよな」
『"かっこいいよ"』
「俺より何倍?」
『"たかおなんかあしもとにもおよばないくらい"』

ま、そうなるよな。と、返ってきた。嘘だよ。高尾も意外とイケメンだよ。ハイスペックだよって、山田さんが言ってたよ。言わないけれど


優しさとうそと魔法の呪文
(本当のことなんて言えない)
(君がいてくれるだけで本当は嬉しい)


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title:ポケットに拳銃

120922蜜柑




 

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