やさしさとうそと魔法の呪文




事故にあって、入院してから数週間。毎日高尾を見る


今日も来てくれたし、昨日も来てくれた。
合唱部の副部長の子に、コンクールの日程だいたい決まってるみたいだったら聞いといて。と言ったら文句も言わずに聞いてくれた。

ごめんね。部長なのにもう歌えなくて




あの日、高尾と帰っていて、急にトラックが歩道に乗り上げてきた。そのときに彼を押して自分を犠牲にした。それで良かったんだ。誰か死ぬくらいなら。彼が怪我してバスケができなくなるくらいなら。それで良かったんだ。
と自分に言い聞かせた

結果、彼に罪意識を持たせてしまった。
私は彼を縛りつけてしまった。

そんなつもりなかったのになぁ?そもそも私、本当は軽傷ですんだはず。なんで入院してるのだろう。

でも、あの時一緒にひかれたら、高尾は大怪我だし、私も怪我じゃすまされない。だったらその彼の怪我までも引き受けてしまえばいいのでは。と、思った。


ぐるぐる頭の中ではいろんなことを考えてるのに、思ったことをなかなか伝えられない。悔しい








 

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