消えることなき罪




「…ごめん」

ぽつりと彼女に告げた。
なにも言わない、否、言えない彼女は俺を見つめることしかできなく、その言葉は病室内で消えた






それからなん週間たっただろうか。幸いなことに、少しずつ回復していった。もう少しリハビリを続けたら退院できるらしい。


「なぁ、それうめぇの」
『"ぜんぜんおいしくない。うすい。これあげる"』

ゆっくりと机の上にある、あいうえおが書かれたボードを指さす。そして、そそくさと空いた皿におかずをよせる如月
それお前の嫌いなもんじゃねぇのかよ。うすいとか言っときながらなにやってんだよ
と、ツッコミたくなったが、あえて言わずにこれだけ言った

「嫌いなもん押し付けんなよ」
『"ちがうよ。おなかすいてそうなたかおにめぐんでやってるの"』
「な、どの口が言ってんだよ」

あ、と思った。一瞬如月の顔が歪んだが、直ぐに元に戻り"しゃべってないよーだ"と返してきた

あの事があってから、如月は喋れなくなった。だからその代わりに筆談のような、間接的なものでしか今は会話ができない。それも指をさすのがまだゆっくりだから、一言話すのにとても時間がかかる。

しかし、そんな如月に俺は毎日会いに行く。






 

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