それでも君を愛するということ





昼ごはんの時間、ふと那音を見て思った。気がつけば口が勝手に動いていた

「那音さ、太った?」

目をまんまるくして『え?』と、言いたそうな那音。俺は那音の頬を指で押した

「ほら、真ちゃんもそう思うだろ」
「…そうか?毎日のように顔合わせてるから分からないのだよ」
「んー、そうかな。俺も毎日顔合わせてるはずなのにな」
「…逆に凄いのだよ」
「つーか那音のほっぺ気持ちんだけど」

なにも抵抗しないからむにむに頬を触っていた。やべぇ、いい感じのフィット感…!…とか言ったら流石に那音に怒られそうだ
にしても小さいな。顔がすっぽり手の中に埋まってしまう


"スパコーン"


そのまま触り続けていたら、那音によって丸められた教科書で叩かれていた

『皮が伸びるだろうが馬鹿野郎』

丸めた教科書を再び机の中にしまい、さらさらとペンを走らせる那音。
むすり、とした表情で俺を睨んだ

「あはは、ごめんごめん!あんまりにも那音のほっぺが気持ちいいからさー。なあ、真ちゃんも触ってみろよ。ほらほら」

真ちゃんの箸を持っていない方の手を引っ張って、那音の頬に押し付ける

「な、なにするのだよ」

顔を真っ赤にして、真ちゃん反抗するもんだからなんか可愛い。那音の顔をチラリと覗けば、なんどか目線を泳がして、そして、少し顔を赤らめていた。
なんだよ、お前ら…恋人かっての…


…ん?ああ、そうか。ずっと胸にひっかかっていたのはこういうことか。
真ちゃんが那音の事を好いていて、那音も真ちゃんの事が好きっていう事か。そうか、そうか…

心の中で何度もそれを繰り返した。なのに、いっこうに胸のつっかえがとれなかった










 

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