ぐるぐると回る感情を押さえつけて、こっそり音楽室を後にする。

出来るだけ、出来るだけ音をたてずに走って階段を降りることにした。

音なんて、もう聴こえやしなかった




気がつけば教室で、鞄を持っていて、なおかつ教室の扉を開けようとしていた。が、先に開けたのは俺じゃなく、今、1番会いたくない相手だった


「どけよ」

いつもより低い声で、口から出てしまった言葉にぎょっとした。八つ当たりだと分かっているが、どうにもできない。
目の前にいる那音が少しびくっとなってから、『どうした』と、首をかしげながら口ぱくで伝えた。
「なんでもねぇし」と答えれば、眉を下げながら笑って『そっか』と、声を出さずに言う


『高尾、一緒に帰ろう』

メモを出し、めくって俺に見せる
そして、そこに『待ってた』と付け足した


「ごめん、1人で帰りたい。真ちゃんに送ってもらって」

那音はこくりと頷き、『分かった』と、だけ答えた


那音を背にして教室を去った







 

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