赤司くんと初日の出
息を吐けば真っ白である
まわりを見れば真っ暗である
そしてここは山の中である
「あのぅ、赤司くん?ここどこですか」
赤い綺麗な髪を揺らしながら、前を歩く彼に、恐る恐る聞いてみる
「分からない」
「はい…え?」
「だから分からないと言っている」
「んんん?!いや、待って、まって、ウェイト!初日の出見に行くって言ったの、赤司くんだよね?え、ちょっと待って、これ、遭難なの?遭難なの?ねえ、新年早々遭難しちゃったの俺達」
「蓮煩い」
彼の一言でパニックになってる俺を差し置いて、たんたんと喋りやがる
しかも、進みやがる
さっきから坂道ばかりで、足がパンパンだ
煩い。と、言われたので、とりあえず黙って後ろを付いて歩く。
なにも喋らないおかげで、風の音やらなんやらが、よく聞こえる。
新年早々赤司くんと会うはめになるなんて、ついてない。しかも、遭難だなんて…、余計についてない。
そもそもあいつがいきなり『今から初日の出見に行くから用意しろ』なんて、メール送ってくるのが悪いんだよ
俺、コタツでジャ○ーズカウントダウン見てたんだぜ?酷いよ。
しかも、なんであいつのメール届くの早いんだよ!!携帯会社規制しろよ。あいつの携帯だけ
メールがきて、数分後に俺の玄関が鳴ったのは言うまでもない
「蓮」
「なに」
ふいに名前を呼ばれて、低い声で返事してしまう
「座るか」
「うん」
一言しか喋らない。そんな彼と会話が成り立ってしまう…と、いう…。
「あ、」
赤司くんの隣に座って、前を見る
「初日の出…」
ボソリと俺が呟くと、隣に座っている赤司くんが、
「あけましておめでとう蓮」
と、俺だけに聞こえるぐらいの声で、微笑んできて、言ってきた
「ありがとう?赤司くんもおめでとう」
「今年もよろしくね?」
「あ、はい…。こちらこそ…」
最後の語尾を押された感じがするが、気にしないことにする。
太陽が若干眩しくて、彼の顔がはっきりわからなかったが、なんだか、今、いけない顔をしたのが見えたような、そうでないような…。
「とりあえず、写メでもとって送っとこっと」
携帯を出して、カメラを起動する
そして撮った写メを、友人に送っておいた
赤司くん初日の出(で、どうやって帰るの?)
(知らないよ)
(えっ…)
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130104蜜柑
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