黒バス | ナノ

喩えるならばキスできそうな距離


「ありがとうございましたー」

お客さんが帰っていき、ふう…と、一服する。そして隣にいる彼の顔を見上げて「お疲れ様」と言った。

「そっちこそお疲れ様なのだよ」
「にしても凄かったね。真太郎」
「ふん、当然なのだよ。今日は、かに座が一位だったのだからな」
「そーゆところ変わってないよね」

ふん。と、そっぽを向いた。相変わらずだなぁ。とか思いながら私はまた店の方へ入って行った。

真太郎とは別に幼馴染というわけでもなければ、恋人というわけでもない。ただの高校のときの後輩だ。同じ委員会で面白そうなやつだと思って、つっかかっていただけだ。卒業してから全く進展もなければ、連絡すらなかった。そうしてそのまま数年がたったのだ。

私達が再び出会ったのは私が卒業してから約2年後。私は花屋に就職することになった。それから少し時間がたち、なれてきた頃にバイトとしてやってきたのが真太郎だった。


「真太郎?もう大丈夫だから上がっていいよ。バイトの時間すぎてるでしょ」
「お前ももう少しなのだろう。それまでつきあってやるのだよ」
「…真太郎はいい加減に先輩への敬語の使い方を覚えた方いいと思うよ」
「お前が先輩ぽくないのがいけないのだよ。あんな事したお前が悪い。自業自得なのだよ」
「うえー。でもさ、真太郎それって私と一緒に帰りたいってことでいいのかなぁ〜」


うししと笑って真太郎を見上げると、「勝手にしろ」と言って顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。相変わらずのツンデレだ。
よし、まだ一緒に仕事をしてくれるのだから、コキ使ってやろう。

「真太郎、その上に飾っているバスケットとって」
「これか」
「うん、それそれー。ありがと。もうそろそろ変える頃かなって思ってさー……てうわっ」

背中で話していた私が後ろを向くと、近くにバスケットを持った真太郎が立っていた


「お前が持ってこいといったのだろう。何故そんなに驚く必要がある」
「確かに持ってこいとは言ったけど、こんなに近くによって来る必要ないじゃん」
「狭いのだから仕方ないのだよ」
「は、離れろおは朝巨人め!」

真太郎からバスケットを奪いとって後ろを向いた。近すぎたせいでドキドキが止まらない



「こ、こっちを向くのだよ」
「なんで」
「お前の顔を見たいとかそんなんじゃあ…なくてだな、その…」

仕方なく真太郎の方を向く
さっきのせいで顔が真っ赤だからあんまり向きたくないんだが、しかたがない。
真太郎を見上げると、私と同じで真っ赤だった

「あのう、真太郎。なんで君も真っ赤なのよ」
「お互い様なのだよ…」

その後数秒の沈黙が続く。閉店時間ギリギリということもあり、お客さんがこなくて良かった


「お、俺はお前がここで働いてると聞いたからバイトしているのだよ」
「ほう、それで」
「卒業式なにも言わずいなくなるなんてありえないのだよ」
「それは真太郎が会いにきてくれなかったから」
「…この店でお前を見つけた時は嬉しかったのだよ。離れてからわかった。お前をもう見失いたくない」

まさか彼からそんな言葉出てくるとは思わなかった

「え、あ、それってソウイウ意味でとってもよろしいのでしょうか」
「あ、ああもちろんなのだよ。それでお前はどうなのだよ」

テンパっているのか分からないけど、真太郎がいきなり抱きついてきた。
もちろんさっきからなりっぱなしの心臓は静かにする気はないようです

「あの、段階間違えてませんか?」
「そうなのか」
「わかんないけどね。うん、まあ、好きだからいいよ。許してあげる」


そう言って私は彼をそっと抱きしめ返した。そうしたら、さっきより少し強くて、優しく抱きしめられた。

それからおでこをくっつけて、お互い顔を赤くしながら笑みをこぼした。


喩えるならばキスできそうな距離


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120920蜜柑
title:確かに恋だった

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