やさしいひととき


 陽はすっかり落ちて、夜空にはちかちかと星々の光が輝きだした。

 イーディスは宣言通り、自慢の手料理の数々をアリシアに振る舞ってくれた。
 その量は、とてもひとりの旅人を歓迎するためのものとは思えなかったが、旅の最中はあまり満足の行く食事ができなかったアリシアは、料理とイーディスに心から感謝しつつ、ものすごい勢いでそれらを美味しくいただいた。

 旅人の少女があまりに勢いよく料理を平らげていくので、リリアンナも目を丸くして「食べた分はいったいどこにいってるのかしら…?」と呟いている。

 約束どおり、アリシアはリリアンナにイーディスと知り合うまでの経緯を説明した。
 「反王政機関」という実態の掴めない怪しい組織に危うくどこかへ連れていかれそうになっていたにもかかわらず、イーディスは「いい思い出ができたわねえ」なんてことを言うので、使用人たちも笑いをこらえるのが大変だ。

 今まで旅してきたいくつかの場所の話なども織り交ぜ、一生懸命説明をする若い旅人の話を、領主とその娘はとても楽しそうに聞いてくれた。

 少女もまた本当に楽しそうに、屈託の無い笑顔で話を続ける。

 そんな時間はあっという間に過ぎていった。



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