オーデュボン家 U


 なんだかわからないといった表情でアリシアを見つめるリリアンナではあったが、やがて「とりあえず、お客様なのね!」と両手を打つ。

 アリシアの前に立った彼女は、本当に愛らしい顔立ちをしていた。彼女はドレスの裾を摘むと、軽く膝を折り楽しそうに挨拶をしてくれた。

「リリアンナ・フロン・オーデュボンです。ようこそ、ラルゴへ!」
「あ…はい!アリシア・リプセットと申しますっ」

 優雅な挨拶をしたリリアンナとは逆に、ものすごい勢いでお辞儀をしたアリシア。
 領主の愛娘はけらけらと笑うと、アリシアに握手を求める。すると、彼女はアリシアが背中に掛けている刀の鞘を見て、大きな声を上げた。

「あ!貴方、剣を持っているの!?すごい!異国の方でしょう?旅人さん?」

 早速瞳をきらきらさせて、アリシアの周りをくるくると回るリリアンナ。先ほどイーディスが言っていた、「下の子はとても明るくて元気だから」という言葉を思い出すと、アリシアは再び優しく微笑み、彼女に目線を合わせて答えを返そうとする。

 すると、イーディスが何度か手を叩き、

「はいはい!リリー、質問はまた後で。先に息子に会わせたいの。ギルはどこ?」

 そう使用人に尋ねた。するとメイドのひとりもまた少し困ったように、「旦那様の書庫に居られます」と答えた。領主の息子の話題が出ると、領主どころか使用人の表情も曇ってしまうものだから、アリシアはますます不安を覚えた。

(うーん…いったいどんな人なんだろう…?)

 書庫に行きましょう、イーディスはアリシアにそういうと、使用人たちを解散させリリアンナを部屋につれて帰るように執事に頼んだ。執事に手を預けたリリアンナではあったが、何度かこちらを振り返り、アリシアに聞こえるよう大きな声でこう言った。

「ねえねえ…あとでお母様と何があったのか、教えてちょうだい!絶対だからね!」

 彼女の無邪気で可愛らしい様子に小さく手を振ってから、アリシアは書庫へと向かうイーディスの背中を追いかけた。



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