いつの間にか寝ていたらしい。
死刑執行の前に寝るとか、私も緊張感ないなぁ。

そんなことを考えていたら「目ぇ覚めたか」と野太い声。
そしてたくさんの人が集まる気配と何だか不思議な雰囲気。

それに、これは…
潮の香り…?



「…さて、女。お前ぇ、名は?」



威圧感と共に投げかけられた言葉に疑問を感じつつ答える。
直ぐ執行という訳ではないのだろうか。


その後も続けられる質問に少し不快を覚えたが、どうやら答えなければならないらしく口を開いた。


私と野太い声の人の会話の途中から、困惑した雰囲気が混じり
知らない単語を聞かれ
やっと執行か、と目を開ければそこに居たのは

見たことがないくらい大きな人。

そして告げられた有り得ない言葉。



「白ひげ…海賊団…?」
「あァ…」
「海賊って…まず居ないはずで…居ても遠い国にしか…」



なに、どういう状況?



「いいか、名前。これはまだ断定出来ねぇが…お前ぇの世界とこの世界は違うようだ」
「はい?」



そう考えた理由を話されたが、もう私にはどうだって良かった。
「私の世界」で死ねないのは残念だけど、こうなってしまっては仕方ない。



「分かりました。じゃあ…殺して下さい」



私の言葉に目の前の大きな人(多分、船長さん)以外が驚いている。



「自ら望むたァ、物好きだな」
「私は、"元の世界"では……死刑囚です」



さすがの船長さんも、これには驚いたようだった。



「生きる理由もありません。海賊さんならば女一人殺すくらい造作もないでしょう」



酷い言い方かもしれないが、怒らせてさっさと殺してくれればいい。



「俺達ァ海賊、捕まりゃそれこそ死刑の犯罪者だ」
「はぁ…」



ニヤリと笑った船長さんの顔は悪そうで、いかにも「海賊」だ。



「お前ぇの頼みを聞いてやる義理もねぇ。俺のやりたいようにやる」
「は?」
「マルコ、枷も外してやれ」
「わかったよい」



よく理解出来ない内に外されていく枷。



「ちょっと待って、何なんですか!?」



慌てて叫ぶと船長さんは楽しげにグラララと笑った。
(笑った…んだよね?)



「俺ァお前ぇが気に入った!とりあえず二週間!ここで自由に過ごせ!」



何が気に入ったかは分からないけれど
有無を言わせない視線に、私は従う他なかった。


(海賊、か)

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