もうどれくらい光を見ていないだろうか。 視覚を奪われた私の聴覚は、失った部分を補うように研ぎ澄まされた。 ああ、看守の足音がする。 いつもと足取りが違うのは何故だろう? 「057番、お前を風呂に入れる」 風呂? 理解する前に手足に付いた枷を外され、無理やり立たされる。 混乱するまま身なりが綺麗になり、通されたのは今までと違う、簡素な白い空間。 そこで再び手足枷と目隠しがされた。 「呼びにくるまで大人しくしておけ」 そう残し、看守は去って行った。 ああそうか。 きっと私はもう死ぬのだ。 (サヨナラ、世界。) (やっとお別れだね。) next.. PREV NEXT |