*ロー夢*
雨が降る。
こんな日は腕に残る古傷が嫌に痛む。
「***、傷が痛むか?」
ふと顔を上げると、キャプテンが眉間に皺を寄せていた。
私は、自身の過去を覚えていない。
ただ一つだけ、酷いものだったということはこの身体が覚えていた。
傷だらけで倒れていた私を救ってくれたのは大型ルーキーと騒がれていたトラファルガー・ローで
その時から私は彼に忠誠を誓った。
例え私を助けたことが彼にとって只の戯れだとしても、私の全ては彼だった。
「少しだけ…でも、大丈夫です」
笑って答えれば、彼は苦い顔をした。
ゆるりと伸ばされた手の行方を目で追うと、その行き先は私の頭であり
至極優しい手つきで撫でられた。
「無理はするな」
「無理なんて、」
「…俺には甘えろ」
そんな慈しむような瞳で見ないでほしい。
余計な期待をしてしまう。
「キャプテン、私は、」
「***」
凛とした声で名前を呼ばれ、何も言えなくなってしまう。
「俺は、戯れでお前を助けた訳じゃない」
「……」
「一目惚れだと言ったら、お前は信じるか?」
少し困ったように微笑むキャプテン。
私はと言えば予想外の告白に心臓が早鐘のように煩い。
するり、
優しい手が私の頬を滑る。
「キャプ、テン」
「脈が早いな…期待、するぞ?」
少し意地悪く上がる彼の口角。
その表情は彼に似合っていて、魅力が最大限に伝わった。
「はい…」
期待も何も
私の全ては貴方。
ふわりと抱きしめられ
触れた彼の胸も早鐘のようだった。
(好き、大好きです)
end.
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