酒場に向かえば、まだ店まで十数メートルあるというのに"ウオォォォ"とか聞こえて
もう彼は着いてるんだな、と笑った。



「早かったんだね」
「おぅ***!やっと来たか!」



無邪気な笑顔を向けられ、胸が高鳴る自分が悔しい。
あぁ、やはり私は彼が好きなのだ。



「おじさん、私もビールっ!」
「あいよっ」



受け取ったグラスを軽く彼のグラスとぶつけ、金色に輝く液体を喉に流しこんだ。










「ほら、しっかりしろ***」
「ちゃんと、歩いてる、よ!」



ちょっと飲み過ぎてしまい、私は彼に支えられながら帰路についていた。

触れた箇所から熱が生まれてるようで熱い。
店を出た時はボンヤリしていた頭も徐々に冷え、今はただただ2人でいることに緊張していた。



「***着いたぞ!」
「うん…ありがと」
「じゃああったかくして寝ろよ!」



くるりと背を向けた彼の腕を掴んだ。
彼は私を見てどうした?と首を傾げる。



「…本気だもん」
「おい?」
「年なんて関係ない!本気なの、本当に私、タイルストンさんが、」
「***」



俯いて吐き出すように言葉を発していた私を止めた。
低いその声に顔を上げると大きな彼の手が頭に乗る。



「飲み過ぎたみたいだな」
「……!」
「早く休め」



私の手を外し、彼は去って行った。



「なんで…っ!」



聞いてすらもらえなかった。
私の気持ちを"酔い"の一言で片付けられた。

行き場を失った想いは、私の中で小さく崩れて

私は彼の小さくなっていく背中を見つめ続けていた。


(頬を伝った私の涙は)
(そのまま、足元に落ちた。)


next..


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