![]() 「そんなハレンチな格好でここに来んなって何回も言ってるだろ!」 タイルストンさんと別れてから聞こえた怒号。 誰かなんて言わずもがなだけれど、その声の主に目を向けた。 「パウリーさん…」 葉巻の白煙をくゆらせながらこちらに歩を進めてくる彼は、少し頬が紅い。 「ったく…足出し過ぎだし胸元も開き過ぎだ!」 毎回、ガレーラに来る度パウリーさんには怒られてるな。 怒るけど、彼は私がこんな格好をしてくる理由を知っている。 「だって…少しでも、タイルストンさんに女だって、見てもらいたいじゃない…」 「……」 そう私が反論すれば、彼は困ったような顔で少し躊躇うように視線をさ迷わせ ぽんぽん、と頭を撫でてくれた。 何だかんだ、パウリーさんも優しいのだ。 「…そんなに好きか」 「うん…」 「年だって、かなり離れてるだろ」 「関係ないもん、年なんて」 わかってる。 親子程も差があることくらい。 だけど、そんなもの気にするなら最初から好きになってない。 「でもね、」 パウリーさんの目を見て、最近考えていたことを口にする。 「もう、潮時かなって、思ってるの」 造船所の喧騒が静まったような、そんな錯覚。 言ったのは叶わない恋をする私なのに、パウリーさんは酷く苦しそうな表情をした。 「…そんな顔しないでよ」 「…っ、悪い」 「今日、最後に告白する…フられたら慰めてね」 「あぁ…任せとけ」 私が笑ってみせると彼もぎこちなく笑った。 (甘えてごめん) (でも、この長い恋に終止符を打つには) (まだまだ私は子どもなの) next... |index| 1/1 |