引き裂かれるような思いで飛び出したタイルストンさんの家。
結局彼に抱かれ、その場所へ戻った。

ふわりと優しくベッドに降ろされ、大好きな節くれだった手で頭を撫でられる。
その感触はさっきの恐怖を和らげてくれた。



「ちょっと待ってろ」



そう柔らかなトーンで言うとキッチンに立つ彼。
しばらくして戻った手には湯気のたつマグカップ。



「ホットミルクだ」
「…ありがとう…」



ふんわり立ち上る甘い香りに心が落ち着く。
ホロリホロリと零れ落ちる涙をそのままに、ミルクに口をつけた。



「ガキだガキだと思って、好きというのも勘違いだと思ったんだ」



低く、ゆっくり呟かれた言葉。
それは私が求めていたタイルストンさんの本音だった。



「大きくなるにつれてお前は綺麗になって、おれは戸惑いと喜びを感じた」
「…うん」
「***のためにと上手くかわしていたつもりだったんだが…」



私の手からカップを奪い、その大きな逞しい腕に抱きしめられる。



「…やっぱり嘘付くのはおれの性に合わんみたいだ」



今までの対応と違い過ぎて、私の頭はついて行けなかった。
だってこんな状況、まるでタイルストンさんが私を好きみたい。

でもそんな期待も簡単に打ち砕かれること、私は知っている。

それなのにこのもしかして、という気持ちは私の中で膨らんでいった。



「こんな、抱きしめられたら、わたし、期待しちゃう…」



弱々しく吐いた言葉にタイルストンさんは身体を離し、肩に手を置いた。そして一瞬の沈黙の後、彼特有の大声で伝えられたのは



「おれは***に惚れてる!」



長年、私が望んでいたものだった。


(ずっとずっと、その言葉を待ってたの)


next..


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