じんわり浮かぶ涙に視界が揺れ始めた。



「***に何か用か?」



不意に響いた大声。
私も男性も体が跳ねた。



「1番ドックの…タイルストン…」
「用があるなら、おれもついてくぞ!」



ウオォォォ!
彼の大声と盛り上がった筋肉に、酔いも覚めたらしい男性は逃げて行った。

一気に緊張が解けた私はへなへなと地べたに座り込む。
しかし膝が石畳と仲良くなる前に大きな温かい手が体を支え、そのまま宙に浮いた。



「***、大丈夫か?」



タイルストンさんの腕あったかいなぁ、なんて。気付けばお姫様抱っこ状態。

急に色んなことがありすぎて、オーバーヒートしてしまった私の頭はもはや何も考えられず、ただただ涙が溢れた。



「…もっと早くに来れればよかったな、スマン」
「…?!」
「しっかり捕まっておけ」



小さく呟かれた謝罪と額に落ちた小さな熱。

(今…おでこにキスした…?!)



高鳴る鼓動と火照る頬を隠すように私はタイルストンさんの胸に顔を埋めた。


(甘い疼きが私の身体を駆け巡る)


next..


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