![]() 走って走って、このモヤモヤが吹っ飛んでくれたらいいと思った。 特にどこに向かうでもなく足を動かして、周りをあまり見ていなかったせいか、誰かと軽く肩がぶつかった。 「あ…す、すみません!」 「痛ってーなー…、ん?」 慌てて謝ると如何にもガラの悪い男性。 最初は苛立った口調だったけど、なぜか私の顔を覗き込んできた。 「あの…ごめんなさい…」 「アンタ、有名な***チャンだろ?」 (有名…?) 知らない人に名前を呼ばれて焦る。 「そうです、けど…」 答えると彼は頭のてっぺんから足の先までジロジロと見てきた。 彼からはお酒の匂いがする。 一通り見てニヤニヤ笑ったと思えば、腕を掴まれ恐くなった。 「噂通り、キレーだなァ。ぶつかった詫び、してもらおうか」 キモチ悪い。 手を離そうともがいてはみるけど、彼はびくともしない。 助けを呼ぼうと周りを見たが人通りはなく、更に恐怖を煽る。 (気付かない内に裏町に入っちゃってたんだ…) 「放して…っ」 「誰も来ねーよ、***チャン?」 歴然とした力の差。 私は抵抗しながら、諦めてしまった。 (頭に浮かんだのは) (やっぱりあの人だった) next.. |index| 1/1 |