あんなに"怒り"という感情を露わにした***は初めてじゃないだろうか。

***を追いかけることも出来ず、彼女が出て行ったドアを見つめ、そんなことを思った。


こんなつもりじゃなかったのだ。
まだ若く美しい***がおれなんかとどうこうなるより、先を考えて傷つけずにかわしてるつもりだった。

それがどうだ。
彼女はあんなにも傷ついていた。



ふいに見つめるドアからノックが聞こえる。
返事をする前に顔を覗かせたのは、



「パウリー…」
「…おう」



少し気まずそうに入ってきた彼は視線を外に向けた。



「***のこと話そうと思って来たが…少し遅かったな」



ガシガシと乱暴に頭を掻いたパウリーは一つ溜め息をつき、真っ直ぐにおれを見た。



「わかっただろう、アイツは本気なんだ」



その言葉におれの胸は鷲掴みされたように苦しくなる。



「いつもお前を想って泣いていた」



あの、綺麗に笑う***が。
成長していくにつれ彼女は泣かなくなったと思っていたのは、俺の勘違いだったのか。



「真剣に向き合ってやってくれ…それでダメなら…」
「…ダメなら…?」
「そろそろ、前に進ませてやれ」



パウリーは静かに言うと、ふっと笑う。



「あれこれ考えるな。***は弱い女じゃねぇ」



まだ答えの出せない俺に、それだけ残して彼は去った。



(強いからどんな逆境にも立ち向かえると)
(俺へのエールに聞こえたのは都合が良すぎるだろうか)


next..


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