![]() あんなに"怒り"という感情を露わにした***は初めてじゃないだろうか。 ***を追いかけることも出来ず、彼女が出て行ったドアを見つめ、そんなことを思った。 こんなつもりじゃなかったのだ。 まだ若く美しい***がおれなんかとどうこうなるより、先を考えて傷つけずにかわしてるつもりだった。 それがどうだ。 彼女はあんなにも傷ついていた。 ふいに見つめるドアからノックが聞こえる。 返事をする前に顔を覗かせたのは、 「パウリー…」 「…おう」 少し気まずそうに入ってきた彼は視線を外に向けた。 「***のこと話そうと思って来たが…少し遅かったな」 ガシガシと乱暴に頭を掻いたパウリーは一つ溜め息をつき、真っ直ぐにおれを見た。 「わかっただろう、アイツは本気なんだ」 その言葉におれの胸は鷲掴みされたように苦しくなる。 「いつもお前を想って泣いていた」 あの、綺麗に笑う***が。 成長していくにつれ彼女は泣かなくなったと思っていたのは、俺の勘違いだったのか。 「真剣に向き合ってやってくれ…それでダメなら…」 「…ダメなら…?」 「そろそろ、前に進ませてやれ」 パウリーは静かに言うと、ふっと笑う。 「あれこれ考えるな。***は弱い女じゃねぇ」 まだ答えの出せない俺に、それだけ残して彼は去った。 (強いからどんな逆境にも立ち向かえると) (俺へのエールに聞こえたのは都合が良すぎるだろうか) next.. |index| 1/1 |