手を引かれて、着いたのはタイルストンさんの家。
彼らしい、適当に片付けられた部屋。
何よりも、彼の匂いでいっぱいな空間に胸が高鳴る。

…諦めなきゃってわかってるのにな…



「***」



低い声で呼ばれ、我に返った。
掴まれた手が離されて少しだけ寂しい。



「…何で今日来なかった」



その問いに、頭の中が冷えていくのを感じる。

なに、それ。
私の最後の、本気の告白を聞きもしなかったのに。



「大体、どうしてアイツといるんだ!俺は心配して…」
「勝手なこと言わないでよ!」



声を荒げると驚いたのか、タイルストンさんは目を丸くした。



「彼女になんてなれないのに毎日行かなきゃいけないの?!」
「おい、***、」
「私を受け入れてくれないくせに、他の人と会うのは止めるの?!」
「…っ」



ズルい。突き放して、他の人との幸せを勧められた方がまだ諦めがつくのに。



「私の気持ちなんて、タイルストンさんにとったら気の迷い程度なんでしょ?だったらほっといて!」



枯れたと思った涙はまだ枯れていなかったらしい。ぼろぼろと流れて止まらない。



「私が貴方をどれだけ好きで、どれだけツラいかなんて解ってないくせに…!」



悔しい、悔しい。
こんなにひどいと思うのに

嫌いになれないんだもの。


あんなに求めた彼と今は居たくなくて
私は制止も聞かずに家を飛び出した。


(貴方に近づけないのに)
(傍に居続けるなんてつらすぎる)


next..


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