結局***は姿を見せなかった。

落ち着かないのを隠すように全力で仕事をしていたら当然の如くパウリーに煩いと怒鳴られたが
その際、パウリーは何か言いたげに俺を見てきた。

何かあるのかと問うたが、歯切れ悪く「…いや」と返される。

珍しいパウリーの様子にもしや***のことを知っているのかと気になり、聞こうとしたところで若い衆の話し声が耳に入った。



「***ちゃんがか?!」
「あぁ…酒屋のコールと居たよ」
「今日姿を見ないと思ったら…」
「アイツ***ちゃんにしつこかったから、断れなかったんじゃねーか?」



コール…よく***に絡んでた男か。
以前彼に話し掛けられ困ったように笑いながら俺に助けを求めた***を思い出す。



「あー、確かに。でもよォ、悔しいけどアイツ、顔いいんだよな」
「だなー。悔しいけど」



心配させといて他の男と居るのかという気持ちと
つきまとわれて困ってないかと気になるのと
アイツなら***の隣に並んでも自然だという気持ち。

色んなものが混ざり合って、どうしようもなくイライラする。



「…タイルストン」



俺の苛立ちに気づいたのか、パウリーは低く俺を呼ぶ。



「…今日は疲れたな。スマン、先に帰る」



あんなに***について聞きたかったのに、俺はパウリーが何か言うのも聞かず造船所を後にした。




(あの時出会っていなければ、なんて)
(意味のない仮定)


next..


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