3食目




帰宅後、スマホを手ににやにやしてしまう。
新しくLINEの友だち欄に追加された「鎌先靖志」の文字。

私の突拍子もないお願いを聞き入れてくれた。


あの後少しお話して、どうするか決めた。
朝から待ち合わせして、お弁当を渡す。
帰りもお互い部活で同じくらいの帰宅時間なので待ち合わせて空のお弁当箱を受け取るという算段だ。

鎌先先輩は「洗って返す」と言ってくれたけど、私のお願いだし、何よりその日のうちに感想も聞きたいからお断りした。


何が好きかなぁ。やっぱりお肉だろうか。
ちょっとLINEで聞いてみようかな。

必死に考え、うんうん唸りながらやっとできた文章をドキドキしながら送信。
ものの数秒で付いた既読に少し気分が高揚する。


三分ほど経っただろうか。
ぺコン、と軽快な音を立ててスマホが通知を知らせる。



『唐揚げと、玉子焼きが入ってたら嬉しい』



控えめなリクエストにふふ、と笑いが漏れた。



『じゃあその2つは絶対に入れますね!』

『頼む。明日、楽しみにしてる。』



私のお弁当を待ってくれてる人がいる。
それは久々に味わう感覚だった。



「楽しみにしてる、だって…!」



独り言なんて言っちゃって。
どんだけ浮かれてるんだ。

その後も何通かやり取りして、会話が終了。

俄然やる気が出てきた私はそのままキッチンへ行き、お弁当の下準備に取り掛かった。
鼻歌を歌いながらキッチンに立つ私にお母さんは首を傾げている。



「何かご機嫌ね」

「うん!私のお弁当食べてくれる人が現れてね!」

「あぁ…だから重箱仕舞ってたのね」



鎌先先輩のおかげで暫く重箱は要らなそうだ。




翌朝、記念すべき一発目のお弁当。
昨夜から仕込んでいた唐揚げはしっかり味が付いているだろう。
揚げている間に他のおかずに取りかかる。

お弁当箱は父が買っといて未使用だったものを発見したのでそれを使うことにした。
男性用なので大きさは十分なはず。

男子高校生なのだから可愛すぎず、でもほんの少しの遊び心で飾り切りしてみたり。
カラッと揚がった唐揚げはいつもより上手くできた気がする。

配置を考えながら詰めていき、なかなかボリュームのあるお弁当ができた。
冷ましてる間に身支度を済ませ、家を出る直前にお弁当を包んだ。



「美味しいって思ってもらえますように!」



シンプルな袋に入れて、待ち合わせ場所へ向かった。


(さよなら重箱!!)







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