「俺と来い」



私の経営する病院にここ数日毎日来る男。
細い身体にひどい隈で、最初来た時は患者さんかと心配した。



「私は行きません」



冷たく言い放つも、男はニヤリと笑うことを止めない。



「いい加減意地を張るのは止めたらどうだ」
「張ってません」



彼は海賊らしい。
今話題のルーキーで、懸賞金は2億の立派な賞金首。

私の何を気に入ったのか勧誘されている。



「別にあなたの船に新しい船医は要らないでしょう」
「いや、要るな」



ほんと、嫌になる。
私の事情も知らないクセに…



「父親のことが気掛かりか?」



ワントーン落とされたその言葉に振り向く。
彼にその話はしてないのに…!



「死んだ父親の病を解明する為研究医やってんだろ、街で聞いた」
「…その通りよ」



男手一つで私を育ててくれた父。
その父が倒れた時、私は何も出来なかった。

だから、私は償いにと一生をかけて解明しようとしているのだ。



「海は広い。医療の発達する島もある」



そんなの分かってる。
でも臆病な私には何も出来ないの。

家族はもう誰も居ない。
頼る人も背中を押してくれる人も、誰も。



「俺は死なない。クルーも死なせない」
「…でも、」
「俺は医者だ。助手に有能な研究医が欲しい」



私は、必要?



「もう一度言う。俺と来い」



刺青の入る手が差し出された。



「***、お前が必要なんだ」



震える手をゆっくり伸ばす。
彼は急かしもせず、それを見つめて待った。

そして私の手が重なった瞬間、強く引き寄せ私を抱きしめた。



「やっと、手に入れた」
「…ロー…」



名を呼べば、返事の代わりに強くなる抱擁。



「言っておくが、お前は研究医兼、俺の女だからな」
「…了解、キャプテン」



クスリと互いに笑い、口づけを交わす。

──今思えば、最初からこうなることは決まってたのかな、なんてね。



(随分強引だったけどね)
(当たり前だ、海賊だからな)


end.



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