捕食者と被食者


HR五分前、廊下がざわつき出した。
と思うと何人もの女の子達が廊下に出ていく。

あ〜…及川くんか。

ぼんやり出ていく友人らを眺めていると彼女達と入れ違いに教室に入ってきた長身の男の子。



「苗字おはよ」

「おはよー松川くん。朝練お疲れ」



エナメルのバッグをドサリと置き、ふーっと息を吐く松川くんは隣の席。



「相変わらず凄いねぇ、及川くん」



ちょうどうちのクラスの所で爽やかな笑顔を振りまくイケメンは女子のハートを射抜いていく。
私はと言えば「目の保養ありがとうございまーす」くらいだけど。



「ほんとアイツのお陰で俺らはモブですよ」

「モブて」



そう零す姿は拗ねてるみたいで可愛い。



「ね、苗字も及川かっこいーって思うの?」



まさか松川くんにそんなこと聞かれると思ってなくて、ちょっと驚いた。

投げかけられた質問にうーん、と少し考えて、



「まぁ、かっこいいとは思うよ」



答えるとむむ、と唇を突き出し「そっかー…」と何かよく分からない返事。



「でも及川くんに限らずバレー部の3年ってみんなかっこいいと思ってるけど」

「え?」



素直に普段思ってることを言えばパッと顔を上げて驚いた顔をした。



「ジャンルの違うカッコ良さがあるよね」

「ジャンル?」

「うん。及川くんと花巻くんはイケメンって感じだけど、岩泉くんと松川くんは男前って感じ」



まぁ、私のイメージなんだけど。



「俺、男前?」

「男前」



キョトンとしつつ聞く松川くんに力強く頷けば、照れたようにそっか、と返ってきた。



「あー、でも松川くんと花巻くん2人はエロいよね」

「……」

「や、ごめん、言い方が悪かったな…色気があるって言いたかったの」



何とも言えない顔をされたので慌てて補足説明。

及川くんは爽やかアイドルなイケメンで、岩泉くんは男気あるストイック男前だけど、松川くんと花巻くんが2人揃うとそこはかとなくアダルティーな香りがする…気がする。
決してスケベって意味ではないのだよ。



「2人が本気出したら女の子達イチコロだよ、多分」



落ちない女性が居たら教えてほしい。
こんな涼し気な目で流し目された、ら…



「じゃあ」



すっと立ち上がった松川くんは身を乗り出し、私の机に手を付き耳元に口を近付けた。



「苗字も、オチてくれる?」



ぞわり、粟立つ肌。

そんな甘い声で、そんな目で見つめられたら。



「そ、だね…」



って言うしかないじゃん。



「そっか。じゃあ色気出す練習でもすっかな」

「あ、はい…」



からかったのか何なのか分からないけど
松川くんの色気を目の当たりにしたおかげで顔が熱い。

ニヤニヤ笑う彼を無視し、頬の火照りを納めるべく冷たい机に突っ伏した。


END






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