お礼の飴
…救世主な彼にお礼がしたい。
そう思った私はちょっと悩んでいた。
何をしたらいいんだろう…
アレコレ考えていると、ふわりと優しく頭を撫でられる。
「名前、どしたの」
「あ゛ー親友の下の名前ちゃん…」
私の親友、親友の下の名前ちゃん。
優しくてかっこよくて、私を甘やかしてくれる。
「救世主さんにお礼がしたい…」
「救世主ぅ?」
怪訝な顔をする彼女に事の顛末を説明。
「…てなわけでね、烏野排球部の救世主さんに何かしたいんだよ」
「…またナンパされたのね…」
違うんだよ、遊びに誘われただけ。
訂正すると溜息を吐かれた。
「会えるんなら…部活で使えそうなのあげたら?」
「部活で…タオルとかは?」
「いいんじゃない?」
空き時間、お菓子をつまみながら親友の下の名前ちゃんによるお悩み相談室である。
次で今日の講義終わりだし、スポーツ店見に行ってみようかな。
で、スポーツ店に来たはいいけど…
「ねーねー、お姉さん!可愛いですね!」
イケメンくんに絡まれてる。
やんわりスルーしてるのにずーっと付いてくる。何でだ…!
あ、バレーボール…救世主さんがいつも使ってるであろうボール。
何となく手に取ってみる。
「あれ、お姉さんもバレーするの?」
「"も"?」
じゃあこのイケメンくんもバレー部なのかな?と彼を見上げた。
「あ、やっとこっち見てくれ−−」
「おいコラクソ川ぁ!!!」
突然の怒号と共にブチ切れの男の子が来た。
どうやらイケメンくんの仲間らしい。
「岩ちゃん怖ーい」
「お前人様に迷惑かけてんじゃねぇよ!」
同じジャージだ。…ということはこの2人はバレー部の仲間…?
「うちのがすみません」
「あっ、いえ!えと、お2人ともバレー部なんですか?」
「そーなの!!俺、あっ及川っていいます!と、岩ちゃんは青城でバレー部!」
「うるせぇよ」
岩ちゃんくんが及川くんの頭に拳を落とす。
凄い音してるけど大丈夫なんだろうか…
「で、お姉さんもバレー部なんですか?」
頭を擦りながらニコニコ顔で及川くんが聞いてくる。
「私はしてないんだけど、バレーしてる人にちょっとしたプレゼントで…タオルとか、貰って使うかな…」
バレー部の人の意見は聞いておきたい。
貰って困る物だと申し訳ないし、現場の声大事!
「助かると思いますよ〜」
「あぁ、毎日使うもんだしな」
「そっか…ありがとう!」
お墨付きをもらい、どれにしようか吟味。
悩んだけど有名なスポーツブランドの、オレンジのワンポイントが入ったタオルに決めた。
何だかんだで及川くんと岩ちゃんとずっと一緒だったな…
(及川くんが話しかけてきて岩ちゃんが窘めるって感じだったけど)
でも二人に聞いたおかげですんなり購入できたわけだから感謝している。
「ありがとね」
「いえいえ〜」
「最後までコイツが煩くてすんませんでした」
岩ちゃん…及川くんの保護者なんだね…
二人にもお礼を、とバッグの中を漁る。
「はいこれ!」
手を突き出すと二人とも素直に手を出してくれた。
コロン、とそれぞれに乗せたのは飴玉。
「アドバイスくれたお礼!助かりました!」
そう言って笑うと、二人も笑ってくれた。
「あは、ありがとう」
「いただきます」
「こちらこそ!それじゃあ及川くんと岩ちゃんも部活頑張ってね!」
ばいばい、と手を振って別れた。
そのうち二人のバレーしてる姿見れたらいいなぁ、なんて。
それに…
先程受け取った袋を見る。
…救世主さん、喜んでくれたらいいな。
(岩ちゃんだけ岩ちゃんって親しげに呼ばれてズルい!)
(お前がそう呼ぶからだろ)
(可愛かったね)
(…ん)
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