私のヒーロー




そう言えば、昔っから絡まれやすかった気がする。

小さい頃はオッサンに声かけられてたし、最近ではチャラい男の人によく絡まれる。


何だろう、私はそんなに隙があるのだろうか。


そう漏らすと付き合いの長い親友は「いやいや、名前が可愛いからだよ」って言ってくれたけど、そうじゃないと思う。別に可愛くはないし。
(お世辞なんか言っちゃって!その後めちゃくちゃスタバ奢った。)



「ね、ほら!行こうよ!」



…そう、だから、この状況が初めてではないけど流石に今日の御方はしつこいし腕を掴まれてちょっと痛い。



「いや、結構です」

「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」

「急いでるんです!離してください!」



どれだけ言っても効かない。
腕を掴む力は強くなってきて、段々怖くなってきた。

どうしよう、本当に、怖い…!



「大丈夫大丈夫!絶対楽しいから!」

「嫌、だって…!離して…!」



大声上げたら誰か助けてくれるかな。
そう思った瞬間だった。



「離してあげたら?」



頭上から降ってきた救いの声。

ハッと顔を上げると、すごく背の大きい髭の男の人が見下ろしていた。



「あ?!お前に関係な…」

「嫌がってるだろ」



しつこいチャラ男さんは私同様顔を上げたが、助けてくれている…救世主さん(仮)としよう。
救世主さんの顔を見て固まった。

うん、迫力あるよね。



「ほら、早く離してあげて」

「痛って、」



チャラ男さんの腕を私から引き離すように引いた救世主さん(仮)。



「ちっ、もういいよ!」



捨て台詞を吐き、チャラ男さんはどこかへ行ってしまった。

…よ、よかった…冷静に実況してたけど、本当に怖かった…


「…大丈夫ですか?」


さっきとは全く違う、優しい声音。
改めて向き直ると、先程とは異なり眉尻を下げて心配そうにこちらを伺っている。



「は、い…あの、ありがとうございました…」

「いえいえ、何もなくてよかったです」



俺も緊張しちゃって、と笑う姿は可愛い。
強面だけど、もしかしたら物凄く優しい人なのかも。



「じゃあ、俺はこれで」

「え!あの、お礼を!」

「えぇ?!いやいや、そんな大したことはしてないですから!」

「じゃ、じゃあお名前だけでも!」



食い下がったけど、大したことじゃない、と救世主さん(仮)は結局名乗ることもなく申し訳なさそうに去っていった。

その後ろ姿に再度お礼を言いつつ、何とかヒントを…と思った彼の背中。


"烏野高校 排球部"


あの風貌で高校生という驚きと、手掛かりゲットの喜び。
今度何とかしてちゃんとお礼ができたらな、と私もその場を後にした。



(彼は私のヒーロー!)

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