言葉少なな私について来てくれる名前。
いつだって満足に気持ちを伝えることも出来ず、きっと不安に思うこともあったのではないだろうか。

にこにこと、優しげに細められたその美しい瞳に水の膜を張り、枕を濡らすこともあっただろう。

彼女は何でもないように振る舞うが、たまにその瞳が少し紅くなっていることに気付かないほど私も阿呆ではない。
だからと言って、名前が安心するような甘い言葉を上手く紡げるはずもない。



「長次」
「…なんだ?」
「ふふ、なーんでもない!」



それでも、こうして二人で歩いて行けたら。
そう願う。


私は言葉少なだが、好いた相手を不安にさせたまま放っておくほどの阿呆ではない。

名前、お前の笑顔の為ならばいくらでも。



「名前」
「なぁに?」



伝えてやろう。



「…愛している」



真っ直ぐな想いを、この声で。


(だからお前は)
(隣で笑っていてくれ)

END



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