「いけいけどんどーん!」
「きゃあああ!小平太、速いー!」
背中に乗せたのは名前。
じわじわと鳴く蝉に、夏を感じた。
海が見たい、と言われたから
じゃあ裏山に絶景ポイントがあるから連れてってやろう!と言えば、名前は眩しいくらいの笑顔で頷いた。
全速力で走れば、名前は楽しそうに笑いながら抱きつく力を強くする。
「こへーた、こへーた!」
「何だ名前!」
「すっごく楽しい!」
「それはよかった!」
本当に楽しいようで、彼女は始終笑っていた。
「こへーた!」
「何だー?!」
「大好き!」
「あぁ!私もだ!」
潮の香りがした。
もうすぐ海が見えるだろう。
「よーし、小平太!スピードアップ!」
「任せろ!いけいけどんどーん!」
「あはははは!どんどーん!」
背中に感じる僅かな重みに、幸せを感じた夏の一日。
(おおぉ!海ー!)
(気に入ったか名前!)
(気に入った!)
END