ハッピーハロウィン!
逆トリ→トリップ後 長次と夢主は既にくっついてます。
「トリックオアトリート!」 「とり…おあ…?」 自室で読書をする長次の元へ、名前は決まり文句と共に元気良く訪れた。 その頭上には黒いトンガリ帽子に黒いマント。 楽しそうに笑う名前に長次は首を傾げた。 「名前…どうした…それに、その格好…」 「ハロウィンって言ってね、外国のお祭りなの!」 簡単に説明すれば、長次は興味深そうに名前の格好を見つめる。 「なるほど…その南瓜は魔除けか…」 「そ!さっき一年は組の子たちと周ってきたんだ!」 衣装を見てもらうために名前はクルリと一回転する。 アクセントに付いた帽子の赤いリボンが揺れた。 可愛いな、長次は口元を僅かに緩めた。 頭を撫でてやると彼女は嬉しそうに目を細め、収穫を見せてくる。 「仙蔵くんと留くんはお団子で、こへはおはぎ。文次郎くんはお饅頭…いさっくんは採ってきたヨモギで作ったお手製のお団子!」 「……」 笑顔の名前は可愛いが、自分より先に皆にこの姿を見せたのかと思うと気に入らない。 しかしそんな長次に気付くことなく名前は彼に向かってもう一度セリフを口にする。
「長ちゃん!トリックオアトリート!」
差し出された柔らかな手に先程焼いたビスコイトを乗せる。 長次の手作りだと分かると名前は年上だとは思えないほど喜んだ。
だが、一度感じたモヤモヤは未だ長次の中にある。 ふといい考えが浮かんだ彼は、はしゃぐ名前に言った。
「名前」 「うん?」 「とりっく、おあ、とりーと」 「…え」
突然自分に言われた言葉に固まった。 なんせ、自分はお菓子を用意していなかったからだ。
「えぇ、持ってない…どうしよ…」
困ったようにポケットやら籠の中やらを覗く名前に、長次は予想通りだとほくそ笑む。 そして彼女の耳元で低く囁いた。
「…では、悪戯をしても構わないな…?」
慌てて顔を上げる名前の目に写ったのは、無表情ながらどこか楽しげな長次の姿だった。
(長、ちゃん…っ) (…行こう) (え、やだ、まだ明るい…っ)
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