14 隣で眠る名前に目を向ける。 演技でもなく、本当に熟睡しきっている彼女は無防備だ。 私は、小さく溜息を付いた。 名前はこんな如何にも怪しい私を保護してくれた。 傷の手当をして、着物(洋服、と言ったか)などを買い与えてくれ、食事や寝床まで準備してくれて… そういえばはんばーぐ、という食べ物は非常に美味かった。 桃だって、あんなに甘い物は初めて食べた。 きり丸達にも食わせてやりたいな… とにかく、名前は此方が心配になるほどお人好しだと思う。 初めは警戒していたのに、あの柔らかい声と温かい笑顔に絆されてしまう。 …いや、何よりも無償で与えられる優しさに、私は何やらむず痒い気持ちになってしまうのだ。 年上とは思えないほど無邪気なのに、その包容力はやはり「大人」であるのだ。 そこまで考え、ふと気付く。 愛らしく、ここまで器量良しの彼女なら、恋仲の男がいるのではないか。 20歳、それなら十分居てもおかしくはない。 それなら私は邪魔なのではないか。 いくら今の私が女の形をしているからといって、中身は男だ。 それに、かなりの時間を私に費やしている。 …それは、あまりにも申し訳ないだろう。 明日、名前には私に構わず自分を優先するように言ってみよう。 そう決め、私は瞼を下ろした。 (知らない男に寄り添う名前を想像し) (少しモヤモヤとしたのは何故だろう) next… |