09







長ちゃんご所望の本のうち、何冊かは既に持っていたので棚にリリース。
他にも読みたがっていたけど、それは次回来た時のお楽しみだと説得した。

(本に関してはなかなか手強い…!)



そこでふと、あることに気付いた。

長ちゃんは15歳。
まだまだ成長期で、多分今が身体を作るのに大事な時期だろう。
ましてや忍者なんて身体が資本だ。



「ヘタなもの食べさせるワケにはいかない…!」



一人暮らしだから一通り料理は出来るが、あまりバランスなんか考えて作ったりはしていなかった。
これはマズイ。



「一回荷物置いてからスーパーだ!」
「すーぱー…?」
「そ!食べ物買いに行かなきゃね!」



コクリと頷く長ちゃんを確認し、ビルの階下へと下りる。

そのままエスカレーターで下っていくと、途中で長ちゃんは何かに釘付けになった。



「…シュシュ?」
「しゅしゅ、というのか?これは…」
「うん、髪を結ぶのに使うんだよ」



白い縁に、パステルグリーンのシュシュ。
派手じゃないけど、色も綺麗で長ちゃんに似合いそう。

買ったら付けてくれるかな、なんて考えていると、柔らかい声で長ちゃんは言った。



「…名前に似合いそうだと思った…」
「…っ!」



ふ、と目元を緩ませる仕草。
パッと見はわからないけど、微笑んだみたいだ。

…てゆーか!
長ちゃん…イケメンな発言!
女の子だけど、こんなこと言われたらキュンとしちゃうよ…

固まって赤面している(であろう)私に、長ちゃんは首を傾げた。



「…買ってくるねっ!」



そのシュシュを二つ手に取り、レジへと向かう。
値札を外してもらい、素早く長ちゃんの元へ。



「はい!」
「?」



袋の片方を渡す。
長ちゃんは受け取りながらも不思議そうにしていた。



「私もね、長ちゃんに似合いそうだなって思ってたの!先に言われたからびっくりしたんだけど…」



自分の方を開け、腕に嵌めた。



「お揃い…ね?」



覗き込んで言うと、長ちゃんは少し頬を赤くした。
(あんまり、お揃いしないから恥ずかしい…とかかな?)



「ありがとう…大切にする」
「どーいたしまして!」



長ちゃんにもシュシュを嵌めてもらい、私は上機嫌でビルを後にした。



(覗き込むなんて男を誘う仕草…)
(名前はワザとやっているのか?)

(長ちゃーん!早くっ!)

(…そんなワケない、か…)
((今は私、女だしな…))


next…









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