08







長ちゃんはすごく大人しくて、落ち着いている。
年齢を聞くまで…いや、聞いてからも年下とは到底思えない貫禄を持っていた。

まぁ昔の方が大人と見なされるのが若かったということも関係あるのかもしれないけど。


だけど、今の長ちゃんを見たら
あぁ、やっぱり15歳なんだなぁ。

そう思う。



人に、車に、街並みー私にとっては何の変哲もないものーにキョロキョロと視線を彷徨わせる長ちゃん。
それはおもちゃ売り場の子どものような姿だった。



「あれは車ね。現代の主要な移動手段。ガソリンっていう燃料で動くんだけど…詳しくは私も専門じゃないからわかんないや」
「車…」
「うん。ぶつかったら危険だから、気を付けてね」



あまり自ら聞いてこない長ちゃん。
遠慮なのかわからないけど、興味ありそうなものには説明していった。





* * * * *





買い物に選んだのは、近くのファッションビル。
洋服も雑貨も買えるのでよく利用している。

せっかく長ちゃんはスタイルがいいんだから、可愛いの買おう!と意気込んでいたんだけれど…



「解せぬ…!」



長ちゃんが選んだのはシンプルなTシャツ数枚にチノパンを数枚。
下着については要らないとか言い出した(履いてきたやつがある、って)が、説得してパンツは購入。
ブラは何故か全力拒否されたのでサラシでいくということに。



「可愛いスカートとかさぁ…!」
「…履かない」
「まぁ超シンプルスタイルでもオシャレに見えるマジックは健在ですけれども…!」



無理強いは良くないので諦めた。
非常〜〜〜に!勿体無いけれども!

加えて日常雑貨を購入し、買い物は難なく終了。



「そうだ、長ちゃん!本屋寄って帰ろうか!」
「…本…」



何を隠そう私は本好きである。
一人っ子で、両親が共働きだったから本は幼い頃からのお友達なのだ。

長ちゃんも家にいる時、私の本を何冊か読んでたから嫌いじゃないと思うんだけど…



「…行こう」



心なしか目が輝いているような。
嬉しそう…だよな?



「長ちゃん、本好き?」
「…あぁ、好きだ…学園でも、図書委員をしている…」



ほんの少しだけ饒舌になった長ちゃん。
話をする姿は楽しそうで、本が、学園が好きなんだと手に取るようにわかった。


「じゃあいっぱい買っちゃおう!」
「…でも、」
「私も本好きなの!それに、こっちの本、読んでみたいでしょ?」



一度遠慮した長ちゃんだったけど、相当本が好きなんだろう。
コクリと素直に頷いた。


(かわいいなぁ…)


学園で長ちゃんは最上級生らしい。
まだ長ちゃんの性格を完璧に理解はしていないけれど、きっとしっかり者で面倒見もいいだろう。

向こうで甘えられない分、こっちではどろっどろに甘やかしてやりたい。


そう考えた一時間後。
彼女の手には二十冊程の本が抱えられていて、流石に焦った。


(おおぅ、長ちゃん…思いきったね…)
(これでも絞ったんだ…)


next…









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