03 いい匂いがする。 花の様な甘い香りと、美味しそうな食事の匂い。 意識が浮上し、私は目を開けた。 何処だ… 何だかよく分からない物が多い、明るい部屋。 少し離れた所から鼻唄が聞こえる。 枕元には忍装束と持ち物。 自分の腕には包帯が見えたので、どうやら手当をしてくれたらしい。 それでも自分は忍者の卵だ。 警戒心は手放さない。 少し離れた所にあった気配が此方に向かってくる。 私は枕元に置いてある苦無に手をかけた。 「あ、起きたんですね!よかったー!」 自分が持った緊張感とはあまりにかけ離れた明るい声で、少し気が抜けた。 「気分はどうですか?」 「あ、あぁ…問題ない…」 声の主は女性だった。 が、着物がおかしい。 南蛮のものか? それにしても足も腕も出し過ぎている。 目のやり場に困るんだが… 「ここは私の家です。家の前にあなたが倒れていたので、勝手ながら手当てさせてもらいました」 「いや、助かりました…ありがとう、ございます…」 礼を言うと彼女はホッとしたようにはにかんだ。 「あ!服なんですけど…その、手当てするし、汚れとか凄かったので、着替えさせてしまいました…」 「あ…」 「あの!でも!失礼かとは思ったんですけど…同性ですし、それに、極力見ないようにしてたので!」 彼女はあわあわと色々言っているが、一つの言葉に引っかかりを覚えた。 同性…? 彼女は実は男とか? そして自分の身体の異変に気づいた。 「…?」 「え?どうしました?」 女だ。私が女の身体になっている。 「あの…?」 「……」 「身体、まだキツいようなら寝てていいですよ…?」 「…いや…大丈夫、です…」 私が固まったのを見て、彼女は気を遣ってくれる。 混乱はまだしているが、とりあえず現状をちゃんと知りたい。 話をすべく、改めて彼女と向き合った。 ((女…!私が…!)) (あの…無理はしないでくださいね…) next… |