香る




ふわり。
甘い香りが鼻を掠めた。



「おい、名前」
「なに?」



キョトンとした顔で見上げる彼女は、俺と同様、汗だくだ。
今まで鍛錬していたのだから、当たり前なのだが。



「お前…何か付けてるか?」



少し顔を近付け、すん、と鼻を利かせる。



「何も付けてない…っていうか汗くさいから嗅がないでよー!」



離れようとする名前を捕まえ、更に鼻を近付けてみる。



「いや…甘い匂いすんだよな…」
「え?私石鹸も無香料なのに?」
「そうなのか?じゃあ何の匂いだよコレ」



あまりにもいい匂いで、気になる俺はひたすら原因を探った。



「、ん…ちょっ、と…!」



不意に聞こえた甘ったるい声にハッと我にかえる。



「…?!す、すまんっ!」



知らないうちに彼女の首元に顔を埋めていた。
慌てて身体を離せば、彼女の顔は真っ赤に染まっている。



「ほんとに、何も、付けてないから…」
「あー…うん、急に悪かったな…」
「ん…大丈夫…」



きっと彼女自身の匂いなのだろう、あの甘い匂いを思い出して
俺は自分の顔が熱くなるのを感じた。


(あの2人…私と長次がいること忘れてるよな…)
(…小平太、部屋に戻ろう…)
(だな。いけいけどんどーん!)
(…もそ)


END






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