フェアリー効果



*土井先生視点



最近、学園内で気になる噂がある。
『図書室に行くと悩みが吹っ飛ぶ、気分が良くなる』というのだ。
何故図書室なのか、何が起きているのか。
私は気になり、図書室へと足を運んだ。


中を覗くと其処に居たのは6年の中在家長次と苗字名前。
2人は恋仲らしいが、成績も良く真面目。教師陣からも認められている。
…一部では『夫婦』と呼ばれているけれど。



「…名前」
「うん、まとめといたよ」
「…助かる…」


「あ、長次」
「これだ」
「そっか、ありがと」



名を呼ぶだけで意思疎通が出来るとは…
もはや熟年夫婦じゃないか!



「そうそう、こないだの苗だけど、今日蕾がついてたの」
「…もそ」
「そうだねぇ」
「…もそもそ」
「うん、一緒に見ようね」
「(こくり)」



…平和だ…!
この2人の会話を聞いてれば、そりゃあ何か気分も良くなる。

あまりにも見入っていた所為か、苗字が此方を向いた。



「土井先生、こんにちは!お疲れ様です」
「…お疲れ様です」
「あ、あぁ…」



声を掛けられ誘われるように中に入れば、苗字は柔らかく笑う。



「最近は胃の調子、大丈夫ですか?」
「あー…いい、とはとても言えないな…」
「やっぱり、ですか…」



困ったように笑う苗字。
隣の中在家は少し考える仕草の後、口を開いた。



「…もそ、もそもそ」
「そうなの?」



苗字には伝わったらしいが、私にはサッパリだ。



「今育てている植物があるんですけど、その葉が胃痛に効くみたいなんです」
「(こくり)」
「後で採ってくるので、ぜひ煎じて飲んで下さい」



なんだこの2人は…
うっかり泣いてしまいそうだ。



「ありがとう、中在家、苗字」



ーー図書室から出てきた土井半助の表情は、晴れ晴れとしていたらしいーー



END






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