結果は、後程。
普通に歩いていたら、横の草むらから何かにタックルされて倒れた。
…完全に気ぃ抜いてた。
ここに潮江先輩が居たら「鍛錬が足りん!」とか怒鳴られてただろうな。
「痛ってー…」
「…次屋くん?」
「あれ、名前先輩?」
私の上に倒れていたのは、無自覚方向音痴で有名な次屋三之助くんだった。
「名前先輩、何故忍たま長屋に?」
「…残念ながら此処はくのたま敷地です」
「あれ、道が変わったのか…」
ここまできて、彼は何で自分が方向音痴であることに気付かないんだろうか。
「えーと、とりあえず退いてもらっていいかな?」
事故とはいえ、いつまでも押し倒されているような体制は良くない。
次屋くんに言えば、瞬き一つ、彼はとんでもないことを言う。
「んー…嫌です」
「え?何で!」
ぎゅう、と抱き付いてくる次屋くん。
何?かわいい!!
「名前先輩、柔らかい」
次屋くんが顔を埋めるのは私の胸。
ただのエロガキかよ!
「…ほら、こんな外で寝てるのも変だし」
「じゃあ先輩の部屋で続きしましょう」
「続きって何だこら。じゃなくて。富松くんが探してるでしょ?連れてくから、立って」
それでも彼は動かない。
どーしよっかなぁ…
「…おれ、」
「ん?」
「名前先輩が好きです」
「ありがと、私も次屋くん好きだよ」
後輩に慕われるなんて嬉しいじゃないか。
が、私の返答が不服だったらしい彼は、ぐい、と顔を近付けてきた。
「…そうじゃなくて、」
真剣な顔。
こんなにかっこよかったんだなぁ、男らしくなっちゃって、とか。
色々考えてるうちに唇に柔らかい感触。
少しかさついたそれは、次屋くんの、唇?
「こーゆー意味なんスけど」
「…え?」
再び胸に顔を埋める次屋くんにどうしたらいいか分からず、ただただ顔が熱くなる。
「…いっつも態度に出してんのに、先輩気付かねーし」
「え、あの、」
「俺だって男なんスよ」
ど、どうしよう!
恋愛とか、疎いって自分でも自覚してるし友達にも言われる私はどうしたらいいの!
でも、嫌じゃない。
…ううん、嬉しい。
じゃあこれって、私も次屋くんのこと…
「三之助えぇぇぇぇ!!」
「あ、富松くん?」
「…チッ」
雄叫びと共に出てきたのは富松くん。
そして私たちを見て、青褪めた。
「三之助ー!何やってんだぁぁ!苗字先輩すみません!!!」
もう富松くんは半泣きで土下座だ。
彼は何も悪くないのに…
やっと退いてくれた次屋くんは私も起こしてくれる。
「富松くん、私は平気だから、ね?」
「先輩…!」
「そうだぞ、作。頭上げろよ」
「お前が言うなあぁー!!」
次屋くんは一発富松くんに殴られた後、縄でしっかり繋がれていた。
「それじゃあ苗字先輩、ご迷惑おかけしました…」
「いえいえ…お疲れ様」
キチッとお辞儀して、富松くんは歩き出す。
それを見送っていると、次屋くんはそっと私の肩を引き寄せた。
「返事、夜聞きに行きますから」
耳元でそう囁き、不敵な笑みを残して去って行った。
「〜〜っ!!」
年下に振り回されるなんて悔しい…!
けど、嬉しくも感じてしまう。
とりあえず、返事を聞きにくる彼が真っ赤になってしまうようなとびっきり甘い言葉でも考えるとしよう。
(三之助、先輩にまで迷惑を…って、おい?お前顔赤いぞ?)
(何でもない…)
END
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