アニマルパニック!
「う、えぇ…?」
何とも言えない声が出た。
そりゃそうだ。
自分の身体にこんな異変が起きたら何とも言えない声ぐらい出る。
少し考えて、伊作先輩…いや、ハチのところかな。
と誰にも会わないよう細心の注意を払いながら五年長屋に向かった。
* * * * *
「ハチー…私。入っていい?」
「名前?いいぞー」
返事をもらって戸を開ける。
「どうした名前、っぬあぁ?!」
爽やかな笑顔を向けて私を見た瞬間、ハチは変な声を出して驚いた。
…うん、そうなりますよね。
「名前、それ、え、」
「わかんないけど…朝起きたら生えてたの…」
私の頭には猫の耳。
そして意図せず私の気持ちを表すように動く尻尾。
「な、何か変なモン食ったとか…」
「特に心当たりはない…」
全く、原因不明だ。
自分で耳が伏せているのも尻尾が垂れているのも分かる。
…が、先程とは一変、ハチの表情が輝いていることに気付いた。
「なぁ、あのさ、触って見てもいいか?!」
「あ…うん、どうぞ…」
そっと耳に触れるハチ。
生物委員だからか、撫で方が上手くて気持ちいい…
自然と瞼が降り、温かい掌に擦り寄ると、ハチは一瞬ピクリと手を止めた。
「ハチ…?」
「あ、あぁ…いや、尻尾も…」
ゴツゴツした手が尻尾を撫で上げた。
「ひ、ぁあ…っ!」
「、?」
「っ!」
声、出た。
しかも、最中みたいな声。
ハチも顔真っ赤にしてビックリしてる。
…けど、尻尾を撫でられた瞬間、物凄い快感が身体を通り抜けたのだ。
それこそ、ハチとまぐわっている時ような…。
「あの、ハチ、ごめ…」
「…悪い」
「へっ?、あ、やぁっ!」
シュッ、と尻尾を扱くように何度も撫でられる。
甘い声を上げてしまう私の口にハチは彼の唇を落とし、楽しそうに耳元で囁く。
「尻尾…性感体みたいだな…」
「あ、やっ…耳元で、喋んないでぇっ…!」
「なんだ、耳も感じるんだな…」
「あぁ、んっ!」
片手で尻尾を擦り上げ、もう片方の手で胸を揉みしだき、耳を食まれる。
やだ、なに、これっ…!
尻尾と耳から来る快感は鋭く、もう達してしまいそう…!
「や、も…ハチ…イ、く…っ!」
「あぁ…我慢すんな…」
もう限界。
そう思った時。
「ごめん竹谷!昨日名前ちゃんに間違って獣化の薬、を…」
これも何かの不運ですか、伊作先輩…
勢い良く戸を開けた伊作先輩は私たちの様子を見て言葉が失速していく。
「…あ、あの…」
「…お邪魔しました〜…」
赤面した先輩はそっと戸を閉め去っていった。
「…とりあえず、先輩の薬が原因みたいだな…」
「うん…、って!見られたー!」
結局、乱れた着物を正し、真っ赤な顔のまま2人で伊作先輩の元へ向かったのだった。
(これ…解毒剤ね…)
(ありがとうございます…)
(あの…ごめんね、邪魔しちゃって…)
((いえ、そんなっ!))
END
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