粘り勝ち




中学で初めて恋をした。
「生徒」を理由に振られた。

卒業と共に再び告白した。
「未成年」を理由に振られた。



あれから数年。
だいぶん慣れた薄いメイクをもう一度確認し、気合いを入れてインターホンを鳴らす。



「…苗字」
「お久しぶりです…木下先生」



少し前まで勘ちゃんや兵ちゃんたちと来てた先生の家。
最後に来たのは一年くらい前だろうか。

上げられたマンションは特に以前と変わらない。



「久しぶりだな、元気しとったか?」
「はい…最近は大学も忙しいですけど、充実してますし元気にやってますよ!」
「そりゃ何よりだな」



微笑んで言う先生はマグカップを差し出す。
出されたコーヒーは私好みの甘い味。
覚えててくれたことが嬉しい。

その小さな幸せに背中を押された気がする。
コトリとカップをテーブルに置き、先生を真っ直ぐに見つめた。

ちゃんと、伝わるように。



「先生、私、20歳になりましたよ」
「……」
「木下先生、好きです…」



高校でも大学でも、それなりにかっこいいと思う男の子はいた。
そっちに逃げようと思ったこともある。

だけど、結局私の想いが行き着く先は先生だった。



「先生、好き、大好きです」
「苗字」



ぎゅう、苦しいくらい抱きしめられる。
先生の匂いだ、大好きな、落ち着く匂い。



「…わしはだいぶ年上だぞ」
「知ってますよ」
「若者みたいに簡単な付き合いは出来ん」
「簡単な付き合いなんてしたくないです」



少しだけ、先生の腕に力が入った。



「…参った」



ボソリと耳元で聞こえたその声はスゴく柔らかくて、胸がキュンとなった気がする。



「それって、告白を受け入れてくれたってことですか?」
「あぁ」
「じゃあ私、先生の彼女?」
「…あぁ」



見上げた先生は表情こそ見えなかったけど、真っ赤な耳は隠れてなくて
最大限だと思っていた愛しさが更に募るのを感じた。


(…苗字、)
(名前)
(?)
(私、いずれは木下姓を名乗りたいんです。だから、下の名前に慣れて下さいね?鉄丸さん)
(っ!…お前は…!)

(…、名前、好きだ)


END






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