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「エース、エース」
ぽかぽか陽気の中、私はエースを探す。
春島の気候らしい今、彼は甲板でぼんやり海を眺めていた。
「エース!」
「おぉ、***っ!」
ニカッと笑うエースの笑顔はこの空で輝く太陽のように暖かい。
「はいこれ!」
「ん?」
渡した小さな箱にエースは首を傾げる。
開けて、と促せば彼は慎重に包みを開けた。
箱の中には短剣。
前の島で立ち寄った鍛冶屋、そこで目に留まったそれ。
よく研がれた白銀の刃、握りは落ち着いた金、装飾に燃えるような紅い石が埋め込まれている。
「これ…」
「誕生日おめでとう、エース」
「…!」
大きく腕を広げ、驚くエースを包み込む。
一瞬びくりとその逞しい身体が震えたが、気にしない。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「***…」
前に話してくれた生い立ち。
生まれてきたことに疑問を持っていた彼。
でも私はエースが存在してくれていることに感謝しているのだ。
エースが居なければこんな温かい心を知らなかったし、こんなに誰かを愛おしいと思うこともなかった。
「サッチがね、昨日から仕込み頑張ってたんだよ。エースの好きな料理全部出すって」
「サッチが…」
「マルコもみんなも昨日からずっとそわそわしてるんだ。親父まで落ち着かなくて!」
エースの顔を覗き込むと、眉をハの字に下げていた。
「みんな、エースが大好きで大切なんだよ」
言った瞬間エースは私の胸に顔を隠してしまった。
一筋見えた涙は見なかったことにしてあげる。
「***」
「ん?」
「…ありがとう」
「うん!」
どれだけ世間がエースを拒んでも
私は、この船のみんなはあなたを受け入れるよ。
生まれてくれてありがとう。
(うちの末っ子コンビはかわいいなァ!)
(まったくだよい)
end.
Happy birthday!
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