親父と家族の他に守りたいと思えるものが出来るなんて、昔のおれに想像出来ただろうか。
「家族」というカテゴリーに収まりきれない、愛しい存在。
女なんてとか思ってたおれの考えをぶち壊した***。



「白ひげがあんな弱っちい嬢ちゃんを乗せるなんて、随分腑抜けたもんだな!」



敵は下卑た笑いで***を罵る。

弱い?あぁ、力じゃ弱いかも知れねぇ。
だがアイツは気高く強い心を持ってる。



「弱っちいのはテメーも同じだろい」
「なっ…!」



ヤツは一瞬悔しそうに顔を歪めたが直ぐに腹立つ笑いを浮かべた。



「はん、不死鳥、お前も腑抜けか」
「…あ?」
「女に現抜かすなんざ、白ひげ一番隊隊長の名が聞いて呆れる!」



最初はおれだって、思ったんだ。親父と家族以外に大切なんて、愛しいなんて、と。
でもそれを逆手に取る方法だってあったんだ。

高笑いするヤツに憐れみさえ感じた。
知らねーのか、コイツは。

地面を蹴り、相手の腹に足をめり込ませた。
勢いで海に落ちたヤツは暗い海の底へ。(能力者だったのか…)



「マルコさん…」



か細い声に振り返ると眉をハの字に下げた***が申し訳なさそうにしている。



「怪我はないかよい?」
「はい…でもごめんなさい、私のせいで…」



コイツもわかってないのか、おれが強くいられる理由を。



「守りたいから強くなれんだよい」
「マルコさん?」
「親父を、家族を、…***を守りたいから」



***に笑っていてほしいから、おれは強くある。
おれの言葉に***はふわりと笑い、ありがとうと言った。

そうだ。お前はおれの過去の苦悩なんて知らなくていい。
どんな時代だろうと、おれはお前を守り抜いてやるからな。



(優しくなりたいなら)
(強く、もっと強くあれ)


end.

Image:
2012spark/ポルノグラフィティ



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