「随分呆気ないな…」



ぴっ、と刀に付いた血を払う。
帰ったら手入れしなきゃ。
直ぐ切れ味落ちるもんね。

あぁ、汚い。
汚い汚い汚い、
汚れてる。



踵を返した瞬間、後ろから聞こえた呻きに振り返って、



「この口さえなきゃ、こんなことにならなかったのに、ね」



男の口に、私の怒りを突き立てた。



- - - - -



「ただいまー!」



元気良く船に戻った私を、愛しい恋人が迎えてくれた。



「お帰り***、一緒に降りれなくて悪かったよい」



困ったように笑うマルコの目の下には隈が出来てる。
きっと、忙しかったんだなぁ…。



「気にしないでっ!仕事大変だもんね。それに、偶には1人でうろつくのも悪くないし!」



笑って言えば彼も安心したようで笑い返してくれる。
しかし瞬時に眉が顰められ、手を取られた。



「これ…どうしたんだよい」



その手にはひっかき傷。

傷を付けたであろう、先程の愚かな男たちを思い出す。



『白ひげなんて、ただの時代遅れだろ!』
『それにクルーたちも"オヤジ"だなんて、笑わせる!』
『不死鳥だって再生するだけの化け物だろ!』



口だけの、弱い奴等だった。

ふふ、と笑うとマルコは訝しげに私を見る。



「やんちゃな子猫と遊んであげようとしたら、抵抗されちゃって」
「随分嫌われたようだねい」
「うん…でも、最後は大人しくなったよ」



そう、大人しく
ぴくりとも動かなくなった。



「そうか。けどちゃんと消毒はしとけよい」
「ん、ありがと」



オヤジを、
大事な家族を、
愛しい貴方を、
傷付ける輩は私が排除する。




(これは世直しよ)
(罪人を裁くのは、この私)



Image:
絶望ビリー/マキシマム ザ ホルモン



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